記録によれば原審第一回公判期日において検察官は第一審判決の事実摘示に基いて公訴事実の陳述をなし、そこには公文書偽造の事実の摘示はあるが、偽造公文書行使の事実の記載録のないことは所論のとおりである。しかし行使の目的をもつてする公文書の偽造とその偽造公文書の行使とは刑法第五四条第一項後段の牽連犯として科刑上の一罪に属するものであるから偽造公文書行使について公訴事実の陳述がなかつたところで裁判所がこの部分についても審判することを妨げられるものでないと解しなければならない。
被告事件の陳述を聴かないで審判したことにならない事例
旧刑訴法345条1項,旧刑訴法410条12号
判旨
公訴事実として陳述されなかった偽造公文書行使の事実であっても、陳述された公文書偽造の事実と刑法54条1項後段の牽連犯の関係にある場合には、裁判所はこれについて審判することができる。
問題の所在(論点)
検察官が公判冒頭で公訴事実として陳述しなかった事実について、これと牽連犯の関係にある事実が陳述されている場合に、裁判所が審判の対象とすることができるか(公訴事実の陳述および審判の範囲の限界)。
規範
公訴事実の陳述がなされていない犯罪事実であっても、既に陳述された公訴事実と刑法54条1項後段の牽連犯として科刑上の一罪に属する関係にある場合には、裁判所はその部分についても審判することを妨げられない。
重要事実
検察官は、公判期日において公訴事実の陳述を行ったが、そこには公文書偽造の事実の摘示はあるものの、偽造公文書行使の事実に係る記載はなかった。原判決がこの行使の事実についても有罪として認定したため、被告人側が検察官が陳述していない事実を認定した違法があるとして上告した。
事件番号: 昭和24(れ)1921 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数個の公文書が同時に偽造された場合や、偽造と行使が牽連関係にある包括一罪等の関係にある場合、その一罪の一部について起訴があれば、起訴状に直接記載のない残余の部分についても当然に審判の範囲に属する。 第1 事案の概要:被告人らは、公文書を偽造し、これを行使して貨物係員を欺き、タイヤ等を騙取したとして…
あてはめ
行使の目的をもってする公文書の偽造と、その偽造公文書の行使とは、刑法54条1項後段の牽連犯として科刑上の一罪を構成する。本件において、検察官は公文書偽造の事実を陳述しており、これと一罪の関係にある行使の事実は、明示的な陳述を欠く場合であっても、裁判所の審判の対象に含まれると解するのが相当である。
結論
原判決が陳述のない偽造公文書行使の事実を認定したことは適法であり、憲法31条にも違反しない。
実務上の射程
本判決は旧法下の事案であるが、科刑上一罪の一部について公訴提起または陳述があれば、その効力は不可分的に他の部分にも及ぶという「公訴不可分の原則」に関連する実務上の判断枠組みを示している。もっとも、現行法下では防御権の観点から、訴因変更(刑事訴訟法312条1項)の手続きを要するか否かがより重要な論点となるため、本判決の法理をそのまま適用する際は、被告人の防御に実質的な不利益がないかという視点とセットで論じる必要がある。
事件番号: 昭和27(あ)6146 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯が成立するためには、事前の打合せや意思の連絡が必要であり、これらが認められない場合には単独犯として処理されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は、共犯者が存在する共犯事件であると主張して上告したが、原審(または記録上)では、当該事件において当事者間での事前の打合せ等は認められず、そ…
事件番号: 昭和25(れ)1419 / 裁判年月日: 昭和26年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告は第二審の判決に対してなされるべきものであり、第一審判決の違法のみを主張し第二審判決の違法を主張しない上告理由は不適法である。 第1 事案の概要:被告人側が、第二審(控訴審)の判決ではなく第一審の判決に違法がある旨のみを主張して上告を提起した事案。 第2 問題の所在(論点):第一審判決の違法の…
事件番号: 昭和26(れ)177 / 裁判年月日: 昭和26年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下において、弁護人が主張した上告趣意が単なる量刑不当に帰する場合、それは適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が上告を申し立て、上告趣意書を提出した。しかし、その主張内容は実質的に原判決の量刑が重すぎるという不当性を訴えるものであった。 第2 問題の所在(論点…
事件番号: 昭和26(れ)319 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項(現行の刑事訴訟法405条等に相当)に照らし、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判の判決に対し、量刑が不当であることを理由として上告を申し立てた事案。弁護人が提出した上告趣意書の内容を検討したところ、その実質は量刑不当の主…