一 從來大審院は共犯者のある場合に中止未遂が成立するには他の共犯者の犯行を防止し得たことを要する旨の判例を示しているのであって右判例は今なお変更の要を見ない。 二 被告人が共犯者にその犯行を止めるように勸めたのは、被告人等の本件犯行が發覺し逮捕せられることを虞れた爲であることが證據上認められるのであるから、被告人の所爲は中止未遂にならない。
一 共犯者がある場合の中止未遂の成立要件 二 犯行の發覺、逮捕をおそれて被告人が共犯者に對し中止を勸めた場合と中止未遂の成否
刑法43条
判旨
共犯関係にある者が刑法43条但書の中止未遂と認められるためには、自己の意思により犯罪を中止するだけでなく、他の共犯者の犯行を現実に阻止することを要する。また、その中止は「自己の意思」に基づくものである必要があり、犯行の発覚や逮捕の恐れといった外部的事由による場合はこれに当たらない。
問題の所在(論点)
共犯関係において、一部の者が犯行を断念し他の共犯者に中止を勧告した場合に、刑法43条但書の中止未遂が成立するための要件(結果阻止の必要性および「自己の意思」の意義)。
規範
刑法43条但書の中止未遂が共犯関係において成立するためには、単に自己の実行行為を中止するだけでは足りず、他の共犯者の犯行を現実に阻止(防止)することを要する。また、その中止は「自己の意思により」なされることを要し、他人に発見され逮捕される恐れがあるといった外部的障害によるものではなく、自発的・主観的な理由に基づくものでなければならない。
重要事実
被告人は共犯者Aと強盗を計画し、B宅の屋外で見張りを行っていた。Aが屋内でBを脅迫している際、第三者Cが偶然現れ、BがCに連絡を依頼した。見張り中の被告人は犯行の発覚を察知し、屋内に入ってAに対し犯行を止めるよう勧め、共に立ち去った。しかし、Aは被告人の勧めに従わず、その後現実に金員を強奪した。被告人は中止未遂の適用を主張した。
あてはめ
まず、本件で被告人がAに犯行中止を勧めたのは、第三者Cの出現により犯行が発覚し、逮捕されることを恐れたためであると認められる。これは外部的障害による断念であり、「自己の意思により」中止したとはいえない。次に、被告人が中止を勧告したものの、共犯者Aはこれに従わず現実に強盗の結果を発生させている。被告人はAの犯行を現実に阻止していないため、共犯関係からの離脱や結果防止の要件も満たさない。
結論
被告人の行為は、外部的障害による断念である上、他の共犯者による結果発生を現実に阻止していないため、中止未遂は成立しない。
実務上の射程
共犯の中止に関するリーディングケース。答案では、①「自己の意思(任意性)」の有無と、②「結果の防止(共犯関係の解消)」の二段構えで検討する。特に、着手後の離脱には結果防止に向けた真摯な努力と現実の阻止が必要であることを論述する際に用いる。
事件番号: 昭和24(れ)1005 / 裁判年月日: 昭和24年7月2日 / 結論: 棄却
しかし被告人の近親者に精神病者があつても被告人に精神異常の疑のないときには精神鑑定をしなくても違法ではない。