しかし被告人の近親者に精神病者があつても被告人に精神異常の疑のないときには精神鑑定をしなくても違法ではない。
近親者に精神病者がある被告人の精神鑑定の要否
舊刑訴法219條,舊刑訴法337條
判旨
強盗殺人未遂罪において、被告人が殺害の意図をもって暴行を加え、死の結果が発生しなかったことが判示されている場合、自己の意思により行為を中止したといえない限り、中止未遂ではなく障害未遂と解される。また、共犯者の憤慨により翻意して犯行に及んだとしても、直ちに意思の自由を喪失した抗拒不能の状態にあったとは認められない。
問題の所在(論点)
1. 殺意をもって暴行を加えたが結果が発生しなかった場合に、判決書で中止未遂か障害未遂かが明示的に判示されていないことは理由不備となるか(中止未遂の成否)。2. 共犯者の憤慨という心理的圧迫によって犯行に同意した場合、意思の自由を喪失し抗拒不能の状態にあったといえるか。
規範
刑法43条但書の「自己の意思により」犯罪を中止した(中止未遂)といえるためには、犯罪の結果発生を防止する主観的な任意性が認められなければならない。結果が発生しなかったことが外部的障害や自己の意思によらない事情に基づく場合は、同条本文の障害未遂となる。また、責任能力や期待可能性に関わり、他者の言動による心理的影響があったとしても、意思の自由を喪失し抗拒不能の状態にない限り、完全な刑事責任を免れるものではない。
重要事実
被告人らは共謀の上、被害者A及びBを殺害して金品を強取する意図で、Bを刺身包丁で突き刺して死亡させ、Aに対しても鉄丸棒で頭部を数回乱打して重傷を負わせたが、Aに対する殺害の目的を遂げなかった。被告人C及びDは、途中で恐怖により一度は取引(犯行計画の一部)の中止を申し出たが、共犯者Fがこれに憤慨したため、再度の協議を経て準備を整え、当初の計画通り犯行を決行した。弁護人は、Aに対する犯行が中止未遂であることや、Fの圧迫により意思の自由を欠いていたことを主張して上告した。
あてはめ
1. 原判決は、被告人らが殺害の意図をもって暴行に及び、結果として殺害の目的を遂げなかったと認定している。これは「自己の意思によって行為を中止したために結果を発生させなかった」という中止未遂の事実を否定する趣旨であることが明瞭である。したがって、特段の判示がなくても障害未遂として扱うことに違法はない。2. 被告人Cらが一時的に恐怖を感じたとしても、その後のFの憤慨を受けて再度協議し、自ら準備を整えて犯行を決行している。この過程において、被告人らが意思の自由を喪失していた、あるいは心理的に抗拒不能であったと認めるべき事情は存在しない。
結論
本件は中止未遂には当たらず、また被告人らは意思の自由を喪失した状態ではなかったため、強盗殺人未遂罪等の成立を認めた原判決は妥当である。
実務上の射程
中止未遂の主張に対し、裁判所が明示的に「中止未遂ではない」と説示しなくとも、認定された事実関係から任意性が否定されることが明らかであれば理由不備にはならない。また、共犯者間での心理的圧迫(憤慨等)があったとしても、犯行に向けた準備や協議を継続している場合には、意思の自由は否定されず、共同正犯としての責任を免れないことを示す。
事件番号: 昭和23(れ)1096 / 裁判年月日: 昭和23年11月2日 / 結論: 棄却
所論の如く原審においては、押收にかかる斧と腕時計とについて特に證據調手續をした形跡はなくまた事實調の途中において右二品を被告人に示した形跡もない。しかし原判決においては、右二品を有罪認定の證據として採用していないのであるから、右二品について證據調をしないからとて所論の如き違法があるとはいえない。
事件番号: 昭和26(あ)2474 / 裁判年月日: 昭和26年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人罪(刑法240条後段)の成立には、強盗の機会に殺意をもって人を死亡させた場合も含まれ、当初から殺害して金品を強取する意思で犯行に及んだ場合であっても同罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、以前から自分を馬鹿にしてきたAに対し、自殺する前にAを殺害して道連れにし、そのついでにA方から金…