判旨
強盗殺人罪(刑法240条後段)の成立には、強盗の機会に殺意をもって人を死亡させた場合も含まれ、当初から殺害して金品を強取する意思で犯行に及んだ場合であっても同罪が成立する。
問題の所在(論点)
殺害と強盗の両方の主観的意図を持って犯行に及んだ場合、刑法240条の強盗殺人罪が成立するか。殺害そのものを目的とする意思が併存する場合の罪責が問題となる。
規範
強盗殺人罪(刑法240条後段)は、強盗がその機会に人を殺害した場合に成立する。これには、強盗の実行中に殺意が生じた場合に限らず、当初から殺害と財物奪取の両目的を有して犯行に及んだ場合も含まれる。
重要事実
被告人は、以前から自分を馬鹿にしてきたAに対し、自殺する前にAを殺害して道連れにし、そのついでにA方から金品を強取して酒を飲むなど好きなことをしようと決意した。被告人は、殺害と強取の意思を持ってA方に侵入し、A及びBに斬りつけて手提金庫等を強取したほか、その場に居合わせたDの頭部を強打して死亡させた。
あてはめ
被告人は「Aを殺害して道連れにし、ことのついでに金品を強取」しようと決意して住居に侵入している。これは単なる怨恨による殺害意思だけでなく、財物奪取の意思も同時に有していたといえる。このような主観的態様であっても、強盗の手段として、または強盗の機会に殺害行為が行われている以上、強盗殺人罪の構成要件を充足すると解される。起訴状に強盗殺人の事実が記載され、それに基づき事実認定がなされている点に手続き上の違法はない。
結論
被告人には、当初から殺害と強取の意思が併存していたとしても、刑法240条後段の強盗殺人罪が成立する。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(あ)4203 / 裁判年月日: 昭和32年8月1日 / 結論: 棄却
人の金員を強取しかつその現場で同人を殺害しようと企て、実行に著手したが、強取の目的も殺害の目的も遂げなかつたという場合には、刑法第二四三条第二四〇条後段の強盗殺人未遂罪の一罪として処断すべきである。
強盗致死傷罪における「殺意」の有無を問わない趣旨を前提としつつ、確定的な殺意がある場合(強盗殺人)でも同条が適用されることを確認した事例。答案上は、強盗の機会に殺害行為があれば、動機が怨恨であっても財物奪取の意思が併存する限り強盗殺人罪として処理する根拠となる。
事件番号: 昭和35(あ)2796 / 裁判年月日: 昭和36年5月24日 / 結論: 棄却
一 刑法第二四〇条後段の罪は、強盗犯人が故意に人を死に致した場合及び傷害に因り人を死に致した場合の両者を包含するものであつて、強盗罪と殺人罪との結合罪又は強盗罪と傷害致死罪との結合罪にほかならず、従つて、強盗殺人罪についてはただ刑法第二四〇条後段のみを適用すれば足ること、つとに大審院判例の示すところであつて、今なお、こ…
事件番号: 昭和25(れ)1594 / 裁判年月日: 昭和26年3月6日 / 結論: 棄却
所論検証並びに証人尋問の日時、場所の変更を検察官に通知したことの明らかな証拠が、記録に存しないことは所論のとおりである。しかし、証人尋問や検証の日時、場所を検察官に通知するについては如何なる方法によるもの差支えないものであり、その通知の事実を記録に留めることは必ずしも必要ではないのであるから、その通知の明らかな証拠が記…
事件番号: 昭和32(あ)3259 / 裁判年月日: 昭和33年6月24日 / 結論: 棄却
婦女を強姦した上所持品を強取しようと決意し、まずその前頸部を扼して失神させ被害者の自転車を隠す等の行為に出で、強姦の点は未遂に終つた後即時犯行の発覚をおそれて殺意を生じ殺害した場合は、刑法第二四〇条後段、第二四一条前段、第二四三条、第五四条第一項前段を適用すべきものである