所論検証並びに証人尋問の日時、場所の変更を検察官に通知したことの明らかな証拠が、記録に存しないことは所論のとおりである。しかし、証人尋問や検証の日時、場所を検察官に通知するについては如何なる方法によるもの差支えないものであり、その通知の事実を記録に留めることは必ずしも必要ではないのであるから、その通知の明らかな証拠が記録にないとの一事によつて直ちに通知がなかつたものと断定することはできない。
検察官に対する検証並びに証人尋問の日時、場所の変更通知の方法と通知の事実が記録に記録されていない場合における右通知の有無
刑訴法142条,刑訴法157条2項
判旨
強盗殺人罪の成否について、金員強取の目的を遂げる手段として殺害が行われたのであれば、対象者自身の所有金品を強取する意思がなかったとしても、強盗殺人罪(未遂を含む)が成立する。
問題の所在(論点)
強盗殺人罪が成立するためには、殺害の対象となった者から財物を奪取する意思があることが必要か。強取の対象ではない第三者を殺害(未遂)した場合に、強盗殺人罪が成立するかが問題となる。
規範
強盗犯人が、財物奪取の目的を遂げるための手段として殺害(または殺害未遂)の行為に及んだのであれば、その殺害対象者が財物の所有者であるか否か、あるいは当該対象者から財物を奪取する意思があったか否かを問わず、強盗殺人罪(刑法240条後段)が成立する。
重要事実
被告人は、Aおよびその宿泊先であるBの家族全員を殺害して犯行の発覚を防止した上で、B宅にある金員を強取しようと決意した。被告人はBに対し傷害を負わせたが(殺害未遂)、弁護人はB自身の所有金品を強取する意思がなかったとして強盗殺人未遂罪の成立を争った。
事件番号: 昭和26(あ)2474 / 裁判年月日: 昭和26年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人罪(刑法240条後段)の成立には、強盗の機会に殺意をもって人を死亡させた場合も含まれ、当初から殺害して金品を強取する意思で犯行に及んだ場合であっても同罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、以前から自分を馬鹿にしてきたAに対し、自殺する前にAを殺害して道連れにし、そのついでにA方から金…
あてはめ
被告人は、Bの家族全員を殺害して犯行の発覚を防止した後にB方での金員強取を遂げようと決意し、Bに傷害を負わせている。このBに対する殺害行為は、B方における金員強取の目的を遂げるための「手段」として行われたものといえる。したがって、被告人にB自身の所有金品を強取する意思があったか否かにかかわらず、金員強取という強盗の機会に行われた殺害行為としての性質が認められる。
結論
被告人の行為は、金員強取の手段として行われた殺害未遂であり、強盗殺人未遂罪が成立する。
実務上の射程
強盗殺人罪の客体は、財物の占有者や所有者に限られないことを示す。強盗の機会に、犯行の抑圧や発覚防止のために第三者を殺害した場合でも、それが強盗の手段としての関連性を有する限り、本罪が成立するという実務上の基本原則を裏付ける判例である。
事件番号: 昭和24(れ)616 / 裁判年月日: 昭和24年7月26日 / 結論: 棄却
しかし刑法第二四〇條後段の罪は、強盜犯人が強盜行爲を爲すに人を殺害した場合に成立する結果犯であつて、殺害についての犯意のあることを要件としないものであるから、被告人はA殺害の犯意を有しなかつたものとしても共同正犯たる關係上Bの行爲により發生したA殺害の點について其責を負わなければならない。
事件番号: 昭和25(れ)1112 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
強盗致死の一罪と認むべき所為につき、強盗未遂と強盗致死の両規定を適用した擬律錯誤があつても、これを連続犯として結局強盗致死の一罪で問擬している場合には、右擬律錯誤は未だ原判決破棄の理由と為すに足らない。
事件番号: 昭和23(れ)1680 / 裁判年月日: 昭和24年2月24日 / 結論: 棄却
被告人は巡査部長を射撃して、同人が被告人を追つかけることのできないようにしようと思つて、ことによつたら同人を射殺す結果になるかも知れないが、それもやむを得ないと考へ、ピストルを同人に向け發射し、同人が死んでしまつたのであるから、被告人が殺人罪に問われるのは當然である。
事件番号: 昭和22(れ)204 / 裁判年月日: 昭和23年3月9日 / 結論: 棄却
一 刑訴應急措置法第一二條第一項本文は被告人の請求があつた場合に供述者又は作成者を訊問する機曾を被告人にあたえなければ所定の書類を證據にすることができないといつているのであつて公判期日において被告人に對し供述者又は作成者を訊問する權利のあることを告知してその訊問の請求をするかどうかを確めることは望ましいことには違いない…