強盗致死の一罪と認むべき所為につき、強盗未遂と強盗致死の両規定を適用した擬律錯誤があつても、これを連続犯として結局強盗致死の一罪で問擬している場合には、右擬律錯誤は未だ原判決破棄の理由と為すに足らない。
擬律錯誤が判決破棄の理由とならない一事例
刑法240条後段,刑法55条(削除前),刑法243条,旧刑訴法410条19号,旧刑訴法236条
判旨
強盗の共謀に基づき実行に着手した後、共犯者の一人が強盗の機会に暴行を加えて死の結果を生じさせた場合、他の共犯者に殺意や死の結果への意思連絡がなくとも、共犯者全員に強盗致死罪(刑法240条後段)が成立する。
問題の所在(論点)
強盗の共謀をした者の一人が、他の共犯者の予期しない形で強盗の機会に殺害行為に及んだ場合、殺害に関与していない他の共犯者にも強盗致死罪の共同正犯(刑法60条、240条後段)が成立するか。
規範
1.強盗致死罪は結合犯であり結果犯であるため、強盗犯人が強盗の機会に暴行を加えて他人を死亡させれば、殺意の有無を問わず成立する。2.強盗の共犯関係にある者の間において、被害者に死の結果を与えることについての意思の連絡がなかったとしても、強盗の実行中、共犯者の一人が被害者に暴行を加えて死の結果を生じさせたときは、強盗の身分を有する共犯者全員について強盗致死罪の共同正犯が成立する。
重要事実
被告人らは、地下足袋の売却を装って買主らを海上に誘い出し所持金を強取する計画を立て、役割を分担した。まず仲介人Cを海上に連れ出し脅迫したが、所持金がなかったため目的を遂げられなかった。次に買主Eから強取しようとしたが、Cとの連絡を断つ必要があったため、Cを縛って海岸に上陸させ、共犯者Bに監視させた。監視中、Cが救助を求めて叫んだため、Bは強盗計画の発覚を防ごうと考え、突如所持していた短刀でCを刺殺した。被告人らとBとの間に、Cを殺害する共謀や殺意は認められなかった。
あてはめ
本件では、被告人らはCに対する強盗を共謀し、役割に従って実行に着手している。共犯者Bは強盗の身分を有しており、強盗の機会において、計画の遂行・発覚阻止のために暴行(刺突)を行ってCを死亡させた。強盗致死罪は死の結果について殺意を要しない結果的加重犯としての性質を持つため、共謀者間に死の結果を生じさせることの合意がなくても、強盗の機会に生じた死の結果については共犯者全員が責任を負うべきである。したがって、Bの暴行により生じた死の結果について、強盗を共謀した被告人ら全員に強盗致死罪の帰責が認められる。
結論
被告人らには殺意や死亡させる共謀がなかったとしても、共犯者Bが強盗の機会に引き起こした死亡の結果について強盗致死罪の共同正犯が成立する。
実務上の射程
共謀加担者が予期せぬ暴行により結果が生じた場合の結果的加重犯の共犯の処理を示す。強盗致死傷罪における「殺意の不要」と「共犯者への帰責」をセットで論じる際の重要判例である。あてはめでは「強盗の機会」に行われたか、および「強盗の身分」の連鎖を意識して記述する。
事件番号: 昭和23(れ)720 / 裁判年月日: 昭和23年11月4日 / 結論: 棄却
一 數人が強盜の罪を犯すことを共謀して各自がその實行行爲の一部を分擔した場合においては、その各自の分擔した實行行爲は、それぞれ共謀者全員の犯行意思を遂行したものであり、又各共謀者は他の者により自己の犯行意思を遂行したものであるから、共謀者全員は何れも強盜の實行正犯としてその責任を負うべきものである。そして強盜共謀者中の…
事件番号: 昭和24(れ)1012 / 裁判年月日: 昭和24年7月14日 / 結論: 棄却
刑法第二四〇條後段は「強盜人ヲ死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役ニ虞ス」と規定して殺意の有無を問はず強盜犯人が暴行の結果人を死に致せば強盜殺人罪の成立することを明らかにしているのである。それは暴行脅迫によつて他人の財物を強奪する強盜というやうな危險極まる兇悪な犯罪を敢てするものが、その暴行によつて人を死亡せしめるなら、…