一 數人が強盜の罪を犯すことを共謀して各自がその實行行爲の一部を分擔した場合においては、その各自の分擔した實行行爲は、それぞれ共謀者全員の犯行意思を遂行したものであり、又各共謀者は他の者により自己の犯行意思を遂行したものであるから、共謀者全員は何れも強盜の實行正犯としてその責任を負うべきものである。そして強盜共謀者中の一人又は數人の分擔した暴行行爲により殺人の結果を生じたときは他の共謀者もまた殺人の結果につきその責任を負うべきものである。 二 憲法第三七條にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは公平にして偏頗のない組織構成を有する裁判所の裁判という意義であつて、個々の具體的事案の裁判の内容が常に公平なことを保障する意義を有するものでないことは、既に數次に亘り當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第五九號同年六月二日大法廷判決)。 三 情状酌量による減輕をするか否かは專ら原事實審の裁量權に屬する。
一 強盜共謀者中の或者のなした殺人の結果に對する他の者の責任 二 憲法第三七條にいわゆる「公平な裁判所の裁判」の意義 三 酌量減輕と裁量權
刑法240條,刑法60條,刑法66條,憲法37條
判旨
強盗の共謀に基づき各自が実行行為を分担した場合、共謀者の一人が強盗の手段として殺意を生じて被害者を殺害したときは、殺意のない他の共謀者も強盗殺人罪の責任を負う。
問題の所在(論点)
強盗を共謀した者の一人が、実行の過程で当初の計画にない殺意を抱いて殺害行為に及んだ場合、殺意のない他の共謀者にも強盗殺人罪(刑法240条後段)が成立するか。
規範
数人が強盗を共謀し実行行為を分担した場合、各共謀者は強盗の実行正犯として責任を負う。強盗共謀者の一部がその実行に際して殺意を生じ殺害の結果を招いたときは、殺意のなかった他の共謀者も、強盗の機会に殺人が行われた以上、強盗殺人罪(刑法240条後段)の共同正犯としての責任を免れない。
重要事実
被告人は共犯者Aと、被告人の祖母方から金品を窃取しようと企てたが、祖母が不在にならないため、暴行脅迫を用いて強取しようと相謀った。実行中、Aが祖母を組み伏せ、被告人も祖母の口を抑えたが、祖母が這い出し声を上げたため、被告人は手を離した。その後、Aは単独で殺害を決意し、祖母の頸部を緊締して窒息死させ、両名は金品を強取した。被告人は殺意を有しておらず、殺害行為自体には加担していなかった。
あてはめ
被告人はAと「暴行脅迫を加えて金品を強取しよう」という強盗の共謀を行い、実際に祖母の口を抑える等の実行行為を分担している。強盗殺人罪は強盗の機会に人を殺すことで成立する結合犯であり、共謀者の一人が強盗の手段として殺意を生じさせ殺害した事実は、強盗の共謀の範囲内における態様の変化にすぎない。したがって、直接殺害に関与せず殺意がなかった被告人も、共謀に基づく強盗の遂行過程で生じた結果について責任を負うべきである。
結論
被告人に強盗殺人罪の共同正犯が成立する。
実務上の射程
強盗致死傷罪(240条)において、共犯者の一部に殺意があった場合でも、他の共犯者に殺意の有無を問わず同罪の成立を認める実務上の確立した法理(いわゆる「結果的加重犯の共同正犯」と同様の論理)を示す。答案では、共謀の範囲を広く解し、強盗の機会に行われた殺害行為について、特段の事情がない限り共謀者全員に重い罪責を負わせる論拠として用いる。
事件番号: 昭和25(れ)1112 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
強盗致死の一罪と認むべき所為につき、強盗未遂と強盗致死の両規定を適用した擬律錯誤があつても、これを連続犯として結局強盗致死の一罪で問擬している場合には、右擬律錯誤は未だ原判決破棄の理由と為すに足らない。