一 原判決は本件強盜を單純一罪として判示したのであるから被害者の一人であるAについて原判示のように説示して強盜罪の構成要件に當る具體的事實を明らかにした以上他の被害者の表示を明らかにしなくとも原判決には理由不備の違法はない。 二 被告人の分担した具体的な犯罪行為の判示がなくても、判示事実によつて、被告人が他の共犯者と共謀して自己の犯意を実現するために共犯者の行為を利用したことが認められる以上、共同正犯の判示として十分である。 三 公判請求書に押された裁判所の受理日附印の数字が明らかでないため、公訴が勾留状の請求のあつた日から一〇日以内になされたかどうかが問題となつた場合には、検察官の公判請求書作成の日附、検察庁の被告人に関する移監指揮書作成日附及びその内容、判事が右移監指揮書に同意した日附、刑務所の収容者領収証印の日附並びに弁護人選任届の日附等から公訴提起の日を判断しても差支えない。 四 勾留状の方式について違法があれば、勾留に關する決定に對する抗告その他法律の定める手續にょつてこれが是正を求むべきであつて、これをもつて原判決を攻撃する理由とすることはできない。
一 被害者の多數ある強盜の單純一罪を判示するに當り被害者の一人を明示しなかつたことの當否 二 共同正犯の判示要領 三 公判請求書が裁判所に受理せられた日附の記載が明らかでない場合における公訴提起の日の認定 四 勾留状の方式の違法と上告理由
刑法236條,刑法60条,刑訴法360條1項,刑訴法257条1項,刑訴法457條,刑訴法411條
判旨
共同正犯が成立するためには、共謀者間において特定の犯罪を共同して行う意思の通謀があり、一人がその共謀に基づき実行行為に及べば、他者は自己の犯意を実現するために共謀者の行為を利用したといえるため、自ら実行行為を分担せずとも刑法60条の責任を負う。
問題の所在(論点)
刑法60条の共同正犯が成立するために、被告人が自ら具体的な実行行為(本件では強盗の脅迫・強取行為)の一部を分担したことの説示が必要か。共謀の認定により実行行為の加担を認めることができるかが問われた。
規範
共同正犯(刑法60条)の成立要件である「共謀」とは、二人以上の者が特定の犯罪を行うために、共同して実行する意思を互いに連絡し合う(意思の通謀)ことを指す。共謀が存在する場合、各共犯者は自己の犯意を実現するために互いの行為を利用し合う関係にあるといえる。したがって、共謀に基づき実行行為が行われた以上、特定の実行行為の細部を分担していなくとも、その全体について共同正犯としての責任を免れない。
重要事実
被告人は、共犯者Bと共に強盗を行う意思を通じて行動を共にし、被害者A方に侵入した。現場では、Bが出刃包丁をAの胸元に突き付けて「金を出せ」と脅迫し、反抗を抑圧して現金約1000円を強取した。被告人自身が包丁を突き付ける等の直接的な実行行為にどこまで関与したかが判決文上必ずしも詳細に説示されていないとして、弁護人は理由不備を主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人はBと強盗を敢行する意思の通謀(共謀)の上で、現場に同行しA方に侵入している。この事実は、被告人が「自己の犯意を実現するためにBと行動を共にし、同人の行為を利用した」ことを意味する。Bが実行した脅迫・強取の行為は、被告人との共謀に基づく一連の行動であるため、被告人がどの行為をもって具体的に加担したかを個別に説示せずとも、Bの行為を被告人自身の行為として評価することが可能である。したがって、原判決が共謀の事実を確定した上でBの実行行為を認定している点は、共同正犯の成立を認めるに十分な説示といえる。
結論
被告人はBとの共謀に基づき、Bの実行行為を利用して強盗を行ったといえるため、強盗罪の共同正犯が成立する。原判決に理由不備の違法はない。
実務上の射程
共謀共同正犯の基本的枠組みを示した最初期の判例の一つ。実行行為を直接分担していない者についても、「意思の通謀」と「共謀に基づく実行」があれば、互いに利用・補充し合う関係(正犯性)が認められ、共同正犯の責任を負うというロジックを確立した。実務上、共謀さえ認定できれば、各共犯者の詳細な役割分担の立証が不十分でも共同正犯の成立を肯定できる根拠となる。
事件番号: 昭和22(れ)203 / 裁判年月日: 昭和23年3月13日 / 結論: 棄却
二人共謀して強盗をした場合に、その一人は、自ら暴行、脅迫又は財物奪取の行爲をしなくても、他の共犯者がこれをした事實がある以上、共に強盗の正犯として責任を負うべきである。