他の共犯者に強要され又は欺計によつて、やむなく強盜に參加したもので犯意を阻却するものであるとの主張は、原審辯護人が單に犯情として述べた或は犯意の存在を否定したものに過ぎないことは、原審公判調書の記載に徴し明らかであつて、かかる主張は、舊刑訴法第三六〇條第二項にいわゆる「法律上犯罪ノ成立ヲ阻却スペキ原由タル事實ノ主張」に該當しないものである。
他の共犯者に強要され又は欺計によつてやむなく強盜に參加したもので犯意を阻却するものであるとの主張と舊刑訴法第三六〇條第二項
刑法38條1項,舊刑訴法360條2項
判旨
共犯者と共謀の上で強盗に及んだ場合、被告人自身が現場で暴行・脅迫等の実行行為を分担していなくても、他の共謀者の実行行為について共同正犯としての罪責を負う。また、判決書において他の共犯者の具体的な実行行為が判示されていれば、被告人の現場での具体的行動を判示しなくても罪となるべき事実の判示として欠けるところはない。
問題の所在(論点)
現場で実行行為を分担していない共謀者について、共同正犯の罪責を負わせることができるか。また、判決において被告人自身の具体的な現場での行動を判示せずに、共同正犯の成立を認めることは許されるか。
規範
刑法60条の共同正犯が成立するためには、共謀の事実及びこれに基づく共犯者の実行行為が必要である。共謀に基づく実行が行われた場合、自己が直接実行行為の一部を分担していなくとも、他の共謀者の行為を自己の分担として全体について責任を負う(一部実行全部責任)。
重要事実
被告人は、共犯者らと共謀して本件強盗に及んだ。被告人自身は、強盗の現場において暴行や脅迫などの実行行為を自ら行うことはなかった。原判決では、被告人の現場における具体的な行動については判示されていなかったが、共犯者らによる具体的な強盗の実行行為については詳細に判示されていた。
あてはめ
被告人は共犯者と共謀の上で強盗に及んでいることから、共謀関係が認められる。この場合、被告人自身が現場で暴行・脅迫を行っていなくても、共謀に基づき他の共犯者が行った強盗の実行行為は被告人の行為と同視できる。したがって、原判決が他の共犯者の強盗行為を具体的に判示している以上、それは被告人の「罪となるべき事実」を十分に示しているといえ、被告人自身の具体的行動を判示する必要はない。
結論
被告人は現場で暴行・脅迫を行っていない場合でも、共謀に基づき強盗罪の共同正犯としての責任を負う。原判決に判示の不備はない。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立を認めた初期の重要判例であり、実行行為への関与がない、いわゆる「見張り」や「後方支援」にとどまる共犯者の責任を論じる際の基礎となる。答案上は、60条の要件として「共謀」「共謀に基づく実行」を指摘した上で、実行行為を分担していない事実を本判例の理屈を用いて補充し、一部実行全部責任を論じる際に活用する。
事件番号: 昭和26(あ)1537 / 裁判年月日: 昭和26年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立において、実行行為に直接関与していない者であっても、共謀の事実が認められ、その共謀に基づき犯罪が実行された場合には、共同正犯としての責任を負う。 第1 事案の概要:被告人は、共謀共同正犯の成立を認めた原判決に対し、事実誤認等を理由に上告した。一審判決および原判決は、検察事務官に対…