相被告人の豫審訊問調書を被告人の犯罪事實認定の證據として採用しない場合には、右相被告人を公判期日において訊問する機曾を被告人に與えなくても違法ではない。
刑訴應急措置法第一二條第一項の法意
刑訴應急措置法12條1項
判旨
共謀共同正犯が成立するためには、当初の犯罪計画の一部が断念された場合であっても、新たな犯行について共謀の事実が認められる限り、見張り等の従属的行為であっても共同正犯としての責任を負う。また、事実認定のための証拠の取捨選択や証拠調べの要否は、事実審裁判所の裁量に属する。
問題の所在(論点)
当初の計画とは異なる対象に対する強盗犯行において、直接の実行行為を行わず見張り等の行為にとどまった者に共同正犯が成立するか。また、事実審における証拠調べの裁量の限界が問題となる。
規範
共同正犯(刑法60条)が成立するためには、特定の犯罪を行うことについての共謀が存在し、その共謀に基づいて各自が犯罪を実行することが必要である。犯行の途中で当初の計画を断念したとしても、その後に生じた新たな犯行について共謀が認められ、かつ、見張り等の行為を通じて犯行に関与した場合には、共同正犯としての責を免れない。
重要事実
被告人Aは、当初洋服屋を狙う強盗を計画していたが、戸締まりが厳重であったため断念した。その後、同行していた者から脅される形で別のE宅へ同行した。E宅では、他の共犯者が狂言の喧嘩を始めて被害者を脅迫・制圧し現金を奪取したが、Aはこの間、屋外で「小便に行く」などと言って見張り役程度の行為をしていた。A側は、第二の犯行については共謀がなく、単なる幇助(従犯)にすぎないと主張して上告した。また、被告人F側は主謀者の証拠調べが却下されたことの違法を主張した。
あてはめ
原審は、被告人Aが他の共犯者らと共謀の上、被害者Eに対しナイフ等の凶器を用いて脅迫・抑圧し、現金を奪取した事実を証拠に基づき認定している。Aが主張する「嫌々同行した」「単なる見張りであった」との供述は、原審が採用しなかった証拠に基づく主観的な主張にすぎない。認定された事実によれば、Aは他の者と意思を通じ、見張りという重要な役割を果たすことで強盗の犯行を共同して遂行したものといえる。したがって、従犯ではなく共同正犯としての適用が正当である。また、被告人Fが求めた証拠調べの却下についても、既に他の証拠で心証を得ている以上、裁判所の適法な裁量の範囲内である。
結論
被告人らの行為は強盗罪の共同正犯に該当し、原審の証拠取捨および事実認定に違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
共謀の成立と分担の態様(見張り)が共同正犯を基礎づけるという実務上の通説的見解を裏付けるものである。特に、先行する計画が頓挫した後の新たな犯行への移行場面において、現場での関与が共同正犯性を否定するものではないことを示す。答案上は、共謀共同正犯の成否(特に正犯性)を論じる際の事実評価の基準として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)974 / 裁判年月日: 昭和24年2月15日 / 結論: 棄却
他の共犯者が被告人との共謀前に既に本件強盜の犯意を確定して居たかどうか、と言うことは、被告人の共同正犯たるの罪責を何等左右するものではない。