一 原判示によれば同人が、A及びB等と砂糖強奪の共謀をなしたこと及び他の共謀者において判示強盗行爲を實行したことは明らかであるから原審が同人に本件強主の正犯としての責任を負わせたのは相當である。 二 假りに右辯論が論旨にいうように、同被告人は本件犯行について刑法第三八條第二項の規定に當るという趣旨のものであつたとしても、かような辯論は刑事訴訟法第三六〇條第二項に當る事實上の主張とはいえない。 三 本件原判決の宣告後に公布施行された昭和二二年法律第一二四號によつて、刑法第二五條に改正が加えられ、刑の執行猶豫をすることができる場合が擴張されたことは所論のとおりであるけれども、右の改正は、刑事訴訟法第四一五條にいう判決後の刑の變更に該當しないものであることについては、既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(れ)第二四七號同二三年一一月一〇日宣告大法廷判決參照) 四 憲法第三八條第二項は、同條項にいうような自白は、これを證據とすることができないという趣旨を規定したにすぎない。從つて、被告人の公判廷における供述を證據として採用しなかつたとしても同條又はその他の憲法の規定に違反するものでない。
一 實行行爲を擔當しなかつた強盗共謀者の責任 二 事實錯誤の主張と刑訴法第三六〇條第二項の事實上の主張 三 刑の執行猶豫の條件の變更と刑訴法第四一五條の刑の變更 四 被告人の公判廷における供述を證據としなかつたことの合憲性
刑法236條,刑法60條,刑法38條2項,刑法25條,刑訴法360條2項,刑訴法415條,憲法38條2項
判旨
共謀共同正犯が成立するためには、共謀者が自ら実行行為を分担しなくても、共謀に基づき他の共謀者が犯罪を実行した場合には、その全責任を負う。また、実行行為に関与した場合であっても、他者の強盗の犯意を認識しつつ仲間に加わり見張り等の行為を行えば、幇助ではなく強盗の共同正犯が成立する。
問題の所在(論点)
実行行為に直接関与していない共謀者に強盗の正犯としての責任を問い得るか(共謀共同正犯の成否)。また、犯行現場で一部の行為(見張り等)を分担した者に、単なる幇助ではなく強盗の共同正犯が成立するか。
規範
特定の犯罪を遂行する共謀が成立し、その共謀に基づいて一部の者が実行行為に及んだ場合、実行行為を自ら分担していない共謀者であっても、正犯としての責任(共謀共同正犯)を負う。また、他者の犯行を認識した上でこれに加わり、見張り等の役割を果たす行為は、単なる幇助にとどまらず、共同の意思に基づく実行行為の分担として共同正犯を構成する。
重要事実
被告人Cは、A及びBらと砂糖強奪を共謀したが、犯行現場において直接の実行行為を共にしたわけではなかった。他方、被告人Eは、他の共謀者らが強盗を行おうとしていることを認識・察知しながら、その仲間に加わって暴行行為に加担し、被害者が拉致・監禁される際に見張りを行った。弁護人は、Cについては実行行為の欠如を、Eについては強盗の犯意の欠如または幇助にとどまることを主張して上告した。
あてはめ
被告人Cについては、原審においてA、Bらとの間で砂糖強奪の共謀が認められ、他の共謀者がその共謀に基づいて強盗を実行したという事実が認定されている。この場合、現場での実行行為の有無を問わず正犯の責任を負うべきである。被告人Eについては、他の被告人らが強盗を実行することを認識しながら仲間に加わり、強盗を完遂する意図をもって暴行や見張りを行っており、単なる幇助ではなく共同正犯としての主観・客観的要件を充足していると評価される。
結論
被告人Cに共謀共同正犯が、被告人Eに強盗の共同正犯が成立するとした原判決の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
共謀共同正犯の理論的根拠(「一部実行全部責任」)を裏付ける重要判例であり、答案上は実行行為のない者への正犯性の肯定、および見張り役の正犯・幇助の区別(正犯意思の有無)を論じる際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和22(れ)125 / 裁判年月日: 昭和23年1月15日 / 結論: 棄却
相被告人の豫審訊問調書を被告人の犯罪事實認定の證據として採用しない場合には、右相被告人を公判期日において訊問する機曾を被告人に與えなくても違法ではない。