一 原判決は被告人に對し酌量減輕をなすに當り刑法第六六條、第七一條第六八條を適用した上更に同法第七一條第七二條を適用していることは所論の通りであるが、かかる條文が記載してあるからと云つて被告人に對する處斷刑を不明確ならしめるものではなく結局不要の條文を誤つて記載したにすぎないと認められるから原判決には何等影響するところはなく破棄の理由とはならない。 二 原判決事實摘示には被告人は現場附近に到り同行者等が強盜をなすものとなることを知つたにも拘らず、その指圖によつて同附近において見張りに從事した旨判示されているにすぎなくても、證據説明と照らし合せて見れば強盜共謀の事實を認定したものであることがわかる場合には、自らは見張りをしたにすぎない被告人も強盜の共同正犯の責を免れない。
一 判決に不要法條を誤つて記載した場合と上告理由 二 共謀の事實の摘示を欠く見張行爲と共同正犯
刑法66條,刑法60條,舊刑訴法360條1項,舊刑訴法411條
判旨
共謀共同正犯が成立するためには、共謀の事実がある以上、自らは現場で見張りをしたにすぎない者であっても、他の共同正犯者との意思連絡の下に、その行為を利用して自己の意思を実行に移したものとして、刑法60条の責任を負う。
問題の所在(論点)
実行行為に直接加担せず、現場で見張りを行ったにとどまる者について、刑法60条の共同正犯が成立するか。いわゆる「共謀共同正犯」の成否が問題となる。
規範
特定の犯罪を行うことについて共謀が成立した場合、その共謀に基づき他の共同正犯者が実行行為に及んだときは、自ら実行行為の一部を分担せず見張り等の補助的行為に従事したにすぎない者であっても、自己の意思を実行に移したものとして、その犯罪全体の共同正犯としての責任を負う。
重要事実
被告人は、共犯者らと共に強盗を行うことを共謀し、深夜に小型ジープに同乗して犯行現場に赴いた。現場到着後、被告人は他の者が事務所のガラス戸を破って侵入する際、その近辺で指図に従い見張り行為に従事した。弁護人は、被告人の行為は強盗の補助にすぎず従犯にとどまると主張して上告した。
あてはめ
被告人は、犯行前に共犯者と会って運動靴を買い込む等の準備を行い、多数の共犯者と現場へ同行している。現場では、他者がガラスを破る等の強盗の実行を認識しながら、その指図に基づき見張りを遂行した。このような事実は、被告人が他の共犯者との意思連絡の下、彼らの行為を自己の犯罪遂行の手段として利用したことを示すものである。したがって、単なる従属的な援助ではなく、自己の犯罪として実行に移したものと評価される。
結論
共謀の事実が認められる以上、見張りを行ったにとどまる被告人も、強盗罪の共同正犯としての責を免れない。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立を認めた初期の重要判例である。答案上は、実行行為を分担していない共犯者の帰責根拠を論じる際、「共謀」「共謀に基づく実行」の要件を充足すれば、現場での役割が補助的(見張り等)であっても正犯性が肯定されることを示す論拠として活用する。
事件番号: 昭和23(れ)974 / 裁判年月日: 昭和24年2月15日 / 結論: 棄却
他の共犯者が被告人との共謀前に既に本件強盜の犯意を確定して居たかどうか、と言うことは、被告人の共同正犯たるの罪責を何等左右するものではない。
事件番号: 昭和24(れ)2466 / 裁判年月日: 昭和25年2月16日 / 結論: 棄却
強盜の共謀をした者は他の共謀者の暴行脅迫強取等の實行行爲を通じて自己の犯意が實行に移された以上は、たとい、自分は直接強盜の實行行爲をしなくとも強盜の共同正犯たる罪責を免れえないものであるから共謀者の一人である被告人が判示のごとく見張行爲をした以上判示他の共謀者の脅迫、強奪行爲に對しその責を負うべきものである。されば、原…