一 刑訴應急措置法第一二條第一項本文は被告人の請求があつた場合に供述者又は作成者を訊問する機曾を被告人にあたえなければ所定の書類を證據にすることができないといつているのであつて公判期日において被告人に對し供述者又は作成者を訊問する權利のあることを告知してその訊問の請求をするかどうかを確めることは望ましいことには違いないが之をしなかつたからといつて前記法條に違反するものとは解することが出來ない。 二 罪となるべき事實につき證據説明をするには、犯罪事實の記載と相まつて證據の内容を知ることができる程度に、その説明をすれば十分である。 三 判決には事實認定の用に供した證據についてその適法な證據である理由を判示する必要はない。 四 一箇の強盗罪を犯すために數を、殺害したときは、たとえその殺人の行爲が同一の目的を遂行するための手段として行われたものであつても數個の強盗殺人罪に問擬すべきである。 五 一旦強盗殺人の行爲を終了した後、新な決意に基いて別の機曾に他人を殺害したときは、右殺人の行爲は、たとえ時間的に先の強盗殺人の行爲に接近し、その犯跡を隱ぺいする意図の下に行われた場合であつても、別個獨立の殺人罪を構成し、之を先の強盗殺人の行爲と共に包括的に観察して一箇の強盗殺人罪とみることは許されない。
一 刑訴應急措置法第一二條第一項の規定による被告人の訊問權と裁判長による告知の要否 二 判決に示すべき證據説明の程度 三 判決における證據の適法性に關する判示の要否 四 一箇の強盗罪を犯すために數人を殺害した場合の罪數 五 強盗殺人の犯跡隱ぺいのため新な決意に基いて行われた殺人罪と罪數
刑訴應急措置法12條1項,刑訴法360條1項,刑法240條後段,刑法240條,刑法199條
判旨
強盗殺人罪(刑法240条後段)は強盗の機会に殺害を行うことで成立し、強盗殺人の終了後に犯跡隠蔽の目的でなされた別個の殺人は、時間的・場所的近接性があっても独立の殺人罪(199条)を構成する。
問題の所在(論点)
強盗殺人の犯行終了後に、その犯跡を隠蔽する目的でなされた殺害行為が、強盗殺人罪(刑法240条後段)に包括されるか、あるいは別個独立の殺人罪(刑法199条)を構成するか。
規範
強盗殺人罪は、強盗が「強盗をなす機会」において他人を殺害することにより成立する。一旦強盗殺人の行為を終了した後、新たな決意に基づき、先の犯行の発覚を防ぐ等の意図で別の機会に他人を殺害したときは、たとえ時間的に先の行為に接近していたとしても、別個独立の殺人罪を構成し、包括的に一個の強盗殺人罪とみることはできない。
事件番号: 昭和24(れ)562 / 裁判年月日: 昭和24年5月28日 / 結論: 棄却
一 被告人を所論強盜罪の共同正犯に問擬したことは明白であるから、原判決が當該事實に對する擬律において刑法第二三六條と同時に同第六〇條を適用したことは明らかである。ただ後者を併せて掲記することを遺脱したに過ぎない。このように判決書に刑法總則の法條を遺脱しても判文全體よりその遺脱が明白な場合は所論のように擬律錯誤の違法あり…
重要事実
被告人らは、一家を殺害して金品を強奪しようと決意し、昭和21年12月28日夜から翌1月1日未明にかけて、Fら3名を殺害して金品を強奪した(強盗殺人)。その後、被告人らの顔を見知っているGによる犯行発覚を防ぐため、改めて共謀の上、数時間後に別の場所である空き家にGを誘い出し、午前6時30分頃に殺害した(本件殺人)。
あてはめ
被告人らはFらに対する殺害と金品強奪を完了し、一旦強盗殺人の行為を終了させている。その後のGに対する殺害は、先の犯行の発覚を防ぐという「新たな決意」に基づくものであり、時間的にも数時間後、場所的にも別の空き家という「別の機会」に行われたものである。したがって、犯跡隠蔽という主観的なつながりはあるものの、強盗の機会になされたものとは認められないため、強盗殺人罪には包含されず独立の殺人罪として評価されるべきである。
結論
Gに対する殺害行為は、Fらに対する強盗殺人罪とは別個独立の殺人罪を構成する。原判決が刑法199条を適用したのは正当である。
実務上の射程
強盗殺人罪の「機会」の妥当範囲を画する基準として重要。強盗行為との密接な関連性(時間的・場所的接着性)が失われ、犯行終了後に新たな決意が介在した場合には、包括一罪とはならず併合罪として処理すべきことを示す。答案上は、強盗行為の終了時点と後続の殺害行為の間の時間的・場所的隔たり、及び動機の断絶を具体的事実から認定する際に活用する。
事件番号: 昭和25(れ)1594 / 裁判年月日: 昭和26年3月6日 / 結論: 棄却
所論検証並びに証人尋問の日時、場所の変更を検察官に通知したことの明らかな証拠が、記録に存しないことは所論のとおりである。しかし、証人尋問や検証の日時、場所を検察官に通知するについては如何なる方法によるもの差支えないものであり、その通知の事実を記録に留めることは必ずしも必要ではないのであるから、その通知の明らかな証拠が記…
事件番号: 昭和24(れ)2681 / 裁判年月日: 昭和26年3月27日 / 結論: 棄却
強盗共犯の一人が強盗に着手した後家人に騒がれて逃走し追跡されているうち、巡査に発見され追い付かれて逮捕されようとした際逮捕を免れるため同巡査に切りつけ死に至らしめたときは、その強盗殺人の行為につき他の共犯も責任を負うべきである。