強盗共犯の一人が強盗に着手した後家人に騒がれて逃走し追跡されているうち、巡査に発見され追い付かれて逮捕されようとした際逮捕を免れるため同巡査に切りつけ死に至らしめたときは、その強盗殺人の行為につき他の共犯も責任を負うべきである。
強盗の共犯のうちの一人が強盗の機会において為した殺人の行為につき他の者も責任を負う場合の一例
刑法60条,刑法240条
判旨
強盗を共謀した共犯者の一人が、強盗の機会において、逮捕を免れるために他者を殺傷した場合には、他の共犯者もその結果について共犯としての責任を負う。
問題の所在(論点)
強盗の共謀をした者が、共犯者の一人が逃走中に逮捕を免れる目的で行った殺傷行為(強盗致死傷罪の結果)について、共同正犯としての責任を負うか。すなわち「強盗の機会」における行為として共謀の射程が及ぶかが問題となる。
規範
強盗の共謀に基づき実行に着手した以上、共犯者の一人が「強盗の機会」において行った行為については、他の共謀者もその結果について刑事責任を負う。具体的には、実行行為の延長線上にある逮捕免脱目的の暴行等は、強盗の機会における行為として共謀の範囲内に含まれる。
重要事実
被告人は、相被告人Aらと強盗を共謀した。Aは強盗に着手したが、家人に発見されて逃走し、「泥棒」と連呼されながら追跡を受けた。その逃走中、巡査に発見されて逮捕されそうになった際、Aは逮捕を免れるために当該巡査を数回切りつけ、死亡させた。被告人は、自ら殺傷行為を行っていないとして、強盗致死(または強盗殺人)の責任を争った。
あてはめ
本件において、Aの行為は強盗の実行に着手し、家人に追跡されている逃走の過程で行われたものである。巡査による追及は強盗行為に密接に関連したものであり、これに対して逮捕を免れるために行われた殺傷行為は、強盗の現場から継続する「強盗の機会」においてなされたものといえる。したがって、強盗を共謀した被告人は、自ら手を下していないとしても、共犯者が強盗の機会に行った殺傷行為の結果について責任を負うべきである。
結論
被告人は、相被告人Aが強盗の機会に行った殺傷行為について共同正犯としての責任を負い、強盗殺人罪(または強盗致死罪)が成立する。
実務上の射程
共謀共同正犯における「共謀の射程」の問題として重要。強盗致死傷罪における「強盗の機会」を広く捉え、強盗の共謀があれば、現場から離脱中であっても密接に関連する暴行結果については共謀の範囲内として責任を認める実務上の確立した判断枠組みを示している。答案では、共謀の存在から強盗致死傷罪の結果への帰責を論じる際に「強盗の機会」というキーワードを用いて論じるべきである。
事件番号: 昭和26(あ)3072 / 裁判年月日: 昭和26年12月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗の共謀がある場合、共犯者が単独で金品を強取しても、他の共犯者はその責を免れない。また、占有補助者から金員を受け取った場合であっても、被害者の占有を認めて強盗殺人罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、被害者CおよびDを殺害して代金を強取しようと共謀した。AとBは両名を殺害したが、…
事件番号: 昭和24(れ)562 / 裁判年月日: 昭和24年5月28日 / 結論: 棄却
一 被告人を所論強盜罪の共同正犯に問擬したことは明白であるから、原判決が當該事實に對する擬律において刑法第二三六條と同時に同第六〇條を適用したことは明らかである。ただ後者を併せて掲記することを遺脱したに過ぎない。このように判決書に刑法總則の法條を遺脱しても判文全體よりその遺脱が明白な場合は所論のように擬律錯誤の違法あり…