強盜致死傷の罪はいわゆる結果犯であるから、強盜共犯者間に被害者に對し死傷を與えることにつき意思の連絡がなくても強盜の實行行爲中共犯者の一人が被害者に暴行を加えて死傷の結果を生ぜしめたときは共犯者全員につき強盜致死傷の罪が成立するのである。そして原判示事實によれば被告人はA等と強盜することを共謀しAが日本刀を抜き持つて眞先きに被害者方玄關内に侵入し判示の如き死傷の結果を生ぜしめたというのであるから、原判決が共犯者たる被告人に強盜致死傷の責任を負擔せしめたことは當然であつて論旨は理由がない。
共謀による強盜共犯者の一人が被害者を死傷せしめた行爲に對する他の者の強盜致死傷罪の責任
刑法240條
判旨
強盗致死傷罪は結果的加重犯であるため、強盗の共犯者間に死傷の結果を生じさせることについての意思の連絡がなくとも、強盗の実行行為中に共犯者の一人が加えた暴行によって死傷の結果が生じた以上、共犯者全員に同罪の責任が認められる。
問題の所在(論点)
強盗致死傷罪(刑法240条)の共同正犯が成立するために、死傷の結果について共犯者間に意思の連絡があることを要するか。特に、結果的加重犯における共謀の範囲が問題となる。
規範
強盗致死傷罪は結果的加重犯である。したがって、強盗の共犯者間に死傷の結果を生じさせることについての意思の連絡(共謀)は不要であり、強盗の実行行為中に共犯者の一人が暴行を加えて死傷の結果を生じさせたときは、他の共犯者もその重い結果について刑事責任を負う。
重要事実
被告人は共犯者Aらと強盗をすることを共謀した。実行にあたり、Aは日本刀を抜き持って真っ先に被害者宅の玄関内に侵入し、被害者に対して判示の死傷の結果を生じさせた。被告人自身は死傷の結果について直接的な意思の連絡を欠いていたが、強盗の共犯関係にはあった。
事件番号: 昭和24(れ)293 / 裁判年月日: 昭和24年7月23日 / 結論: 棄却
既に共謀して強盜をした以上、かりに、所論のごとく他の共犯者の暴行の結果たる傷害について被告人に故意、過失がなかつたとしても被告人も、また強盜傷人罪について共同正犯の責を負わなければならないのである。(昭和二三年(れ)第二四九號同年六月一二日第二小法廷判決)
あてはめ
被告人はAと強盗を行うことを共謀しており、基本犯である強盗罪の共謀は認められる。Aによる日本刀を用いた暴行および死傷の結果は、この強盗の実行行為中に生じたものである。強盗致死傷罪は結果的加重犯であり、基本犯の遂行に伴う高度な危険性が現実化したものであるから、個別の死傷結果に対する意思の連絡がなくても、強盗の共謀に基づき実行行為に及んだ以上、被告人も結果について責任を負うべきである。
結論
被告人にも強盗致死傷罪の共同正犯が成立する。
実務上の射程
結果的加重犯の共同正犯の成否を論じる際のリーディングケースである。答案上は、基本犯(強盗)の共謀と、その実行行為に基づく過失的・無意識的な結果の発生があれば、結果についての共謀がなくても重い罪の連帯責任を負うという論理で用いる。
事件番号: 昭和23(れ)1730 / 裁判年月日: 昭和24年4月2日 / 結論: 棄却
強盜の凶謀をした者は、共謀者の一人又は數人が強盜の手段として行つた暴行に因り相手方を死亡するに至らしめた場合には、自からその實行行爲をしなかつたとしても、他の共謀者と共に強盜致死罪の責任を免れる譯にはゆかないのである。
事件番号: 昭和24(れ)1324 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
一 數名の強盜犯人が、事前に明示的に強盜することを謀議していた場合ばかりでなく、豫め暗默のうちに強盜をすることを互ひに了解していた場合であつても、又できることなら窃盜だけに止め、止むを得ないときは強盜をする旨打合せていた場合であつてもなお共謀の上強盜をなしたものといい得るのである。 二 舊刑訴法の下では檢察官が公訴を提…