一 數名の強盜犯人が、事前に明示的に強盜することを謀議していた場合ばかりでなく、豫め暗默のうちに強盜をすることを互ひに了解していた場合であつても、又できることなら窃盜だけに止め、止むを得ないときは強盜をする旨打合せていた場合であつてもなお共謀の上強盜をなしたものといい得るのである。 二 舊刑訴法の下では檢察官が公訴を提起するには被告人を指定し犯罪事實を具体的に表示すれば足りるのであつて必ずしもその罪名を示す必要はないのである。舊刑訴法第二九一條第一項において被告人を指定し犯罪事實を表示する外なお罪名を示すべきことを規定したのは、取扱の便宜上事件を罪名により簡單に表示すべきことを命じたに過ぎないのである。從つて公判請求書の記載により被告人及び犯罪事實が特定され公訴の範圍が明確にせられている以上、たとい罪名の表示が欠けていたとしてもこの一事により公訴提起の効力を左右するものではないこの事は連續犯通知書についても同様に結論し得るのである。 三 原審は先に公訴の提起せられた窃盜と所論連續犯通知書記載の強盜及び窃盜とは連續犯の關係にあり、又右強盜及び窃盜と所論各住居侵入とはそれぞれ牽連犯の關係にあるものと認定したのである。さればこれらすべての犯罪は結局處斷上一罪をなす。
一 強盜共謀の一事例 二 罪名の記載を欠く公訴提起の効力 三 強盜、窃盜、住居侵入を一罪として處斷したことの正否
刑法60條,刑法235條,刑法236條,刑法235,刑法130條,舊刑訴法291條1項,削除前の刑法55條
判旨
強盗の共謀は、明示的なものに限らず暗黙の了解であっても成立し、また、予備的に窃盗を意図しつつ、止むを得ない場合に強盗を行うという合意であっても認められる。また、公訴提起の効力は、一罪の関係にある事実の全部に及ぶため、公訴事実と一罪を構成する他の事実についても審判の対象となる。
問題の所在(論点)
1.強盗の共謀において、明示的な合意や確定的な殺意・強盗意思が必要か。2.公訴提起の効力は、公訴状に記載されていないが処断上一罪の関係にある他の事実に対しても及ぶか。
規範
1.共謀加担者の意思連絡は、必ずしも明示的であることを要せず、暗黙の了解であっても足りる。また、特定の犯罪(強盗)を行うことについて、それが予備的・条件的な合意(窃盗にとどめるが、止むを得ない場合には強盗を行うという合意)であっても、共謀の成立を妨げない。2.公訴提起の効力は、公訴状に記載された事実と処断上一罪(連続犯、牽連犯、観念的競合)の関係にある事実の全部に及ぶ(公訴不可分の原則)。
事件番号: 昭和23(れ)1370 / 裁判年月日: 昭和24年1月11日 / 結論: 棄却
被告人が相被告人と共謀の上、強盜をした事實を認定している原判決において、二人共謀の事實と共犯者のどちらかが現實に脅迫の實行行爲をしたことが判分上明確である以上、共犯者のうちどちらかが現實に實行行爲をしたかを明示していなくても、被告人の「罪トナルヘキ事實」の判示として缺くるところはない。
重要事実
被告人らは強盗等の罪で起訴された。被告人Aは、強盗の明示的な謀議がなかったとして共謀の成立を争った。事案では、できることなら窃盗にとどめ、止むを得ない場合にのみ強盗に及ぶという趣旨の打合せが存在した。また、被告人Bについては、当初「窃盗」の罪名で公判請求がなされ、後に別個の犯罪事実(強盗・窃盗)を含む連続犯通知書が提出されたが、これらが当初の起訴事実と連続犯や牽連犯の関係(処断上一罪)にあった。
あてはめ
1.被告人Aについて、数名が予め暗黙のうちに強盗をすることを互いに了解していた場合や、窃盗を第一志望としつつも止むを得ない場合には強盗を行うという合意(条件付共謀)があった場合には、共謀の上で強盗を行ったと評価するのが相当である。2.被告人Bについて、検察官が指定した被告人および犯罪事実により公訴の範囲は特定される。たとえ罪名の表示に不備があっても、起訴された事実に係る窃盗と、通知書記載の強盗・窃盗・住居侵入が連続犯や牽連犯の関係にあり、全体として処断上一罪を構成する以上、起訴の効力はこれら全てに及ぶため、裁判所は全てを審判できる。
結論
1.暗黙の了解や条件付の合意であっても強盗の共謀は成立する。2.公訴の効力は処断上一罪を構成する事実の全部に及ぶため、原審が起訴事実以外の事実を認定処断したことに違法はない。
実務上の射程
共謀の認定において「順次共謀」や「黙示的共謀」を肯定する際の基礎となる判例である。また、公訴不可分の原則(刑事訴訟法247条、248条関連)に基づき、訴因変更や審判対象の範囲を論ずる際の古典的根拠として活用できる。特に一罪の一部起訴が全部に及ぶという理屈は、訴因の単一性・同一性の議論で重要となる。
事件番号: 昭和23(れ)1677 / 裁判年月日: 昭和24年2月17日 / 結論: 棄却
一 裁判を公開したことを特に調書に明記する必要のないこと及び公判調書に公開を禁じた旨の記載のない限り公判は公開して行われたものと認むべきものであることは當裁判所の判例(昭和二二年(れ)第二一九號同二三年六月十四日大法廷判決及び同年(れ)第一〇七號同年六月二日大法廷判決)とするところである。 二 共犯者は被告人本人でない…