現行刑法においても、住居侵入罪と強盜罪とはその被害法益および犯罪の構成要件を異にし、住居侵入の行爲は強盜罪の要素に屬せず別個獨立の行爲であり、しかも通常右兩罪の間には手段結果の關係のあることが認められるから、原判決が右兩罪を刑法第五四條第一項後段のいわゆる牽連犯として取扱つたのは正當であつて、論旨は理由がない。(昭和二三年(れ)第一四二九號同年一二月二四日第三小法廷判決參照)
住居侵入罪と強盜罪とを牽連犯とした判決の正否
刑法130條,刑法54條1項,刑法236條
判旨
強盗の目的で他人の住居に侵入する行為は、住居侵入罪と強盗罪の構成要件をそれぞれ充足し、両罪は刑法54条1項後段の牽連犯の関係に立つ。
問題の所在(論点)
強盗の目的で住居に侵入し強盗を遂行した場合において、住居侵入罪が強盗罪に吸収されるのか、あるいは別罪として成立し牽連犯となるのか。
規範
住居侵入罪(刑法130条前段)と強盗罪(刑法236条1項)は、その保護法益および犯罪の構成要件を異にする別個独立の犯罪である。住居侵入の行為は強盗罪の構成要件の要素に含まれないため、両罪が成立した上で、その間に「犯罪の手段」と「結果」の関係が認められる場合には、刑法54条1項後段の牽連犯として処断すべきである。
重要事実
被告人は、共犯者らと共に強盗をすることを計画し、被害者方の屋内に侵入した。被告人は、自ら被害者とその子供を縛り上げ、抜身の日本刀を手に提げて脅迫的な状況を作り出し、箪笥の引き出しから衣類を奪取するなど、強盗の実行行為を分担した。
あてはめ
本件において、被告人らが強盗の目的で被害者宅に侵入した行為は、強盗罪の実行に先立つ手段として行われており、住居侵入罪の構成要件を充足する。一方、強盗罪は財産権および身体の安全を保護法益とするものであり、住居の平穏を害する住居侵入行為を当然には包含しない。したがって、住居侵入行為は強盗罪とは別個の犯罪を構成し、かつ強盗を実現するための手段としての性質を有するため、両罪は牽連犯の関係にあると評価される。
結論
住居侵入罪と強盗罪の両罪が成立し、刑法54条1項後段により牽連犯として処理される。
実務上の射程
住居侵入を伴う強盗事件における罪数判断の基礎となる判例であり、現行の実務でも維持されている。答案上では、住居侵入行為が強盗罪の暴行・脅迫に含まれないことを示し、牽連犯として1つの刑で処断することを明記する際に用いる。
事件番号: 昭和22(れ)42 / 裁判年月日: 昭和22年11月29日 / 結論: 棄却
一個の強迫行爲によつて數人の者からその所持金を奪つた行爲は刑法第五四條第一項前段にいう「一個ノ行爲ニシテ數個ノ罪名ニ觸レ」にあたるものである。
事件番号: 昭和24(れ)1324 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
一 數名の強盜犯人が、事前に明示的に強盜することを謀議していた場合ばかりでなく、豫め暗默のうちに強盜をすることを互ひに了解していた場合であつても、又できることなら窃盜だけに止め、止むを得ないときは強盜をする旨打合せていた場合であつてもなお共謀の上強盜をなしたものといい得るのである。 二 舊刑訴法の下では檢察官が公訴を提…
事件番号: 昭和22(れ)154 / 裁判年月日: 昭和22年12月24日 / 結論: 棄却
一 窃盜の罪と強盗の罪とは、その手段において異なるところはあるが、財物奪取行爲たる罪質においては同一であり、ともに同一の章の下に規定されてゐる刑法犯であるから、窃盜と強盗との連續行爲は、刑法第五五條にいわゆる同一の罪名に觸れるものである。 二 原審が連續犯として處断した行爲について、辯護人が連續犯にならないと主張するこ…
事件番号: 昭和24(れ)2949 / 裁判年月日: 昭和25年5月4日 / 結論: 破棄自判
最高裁判所が破棄自判するに當り被告人は犯時及び原審判決當時には少年であつたが今や滿十八歳以上となつたものであるから、少年法を適用しないで處斷刑期並びに原判決の言渡した不定期刑(二年六月以上五年以下)の範圍内で被告人を懲役三年六月に處し、第一審における未決勾留日數中八〇日を刑法二一條に則り本刑に算入すべきものとする。