一 記録を調べてゐると、原審の裁判長が被告人A、Bの兩名に對して、その氏名、年齢、職業、住居、本籍および出生地について訊問し右被告人等が答辯しているのは、原審第二回公判廷においてだけであることが認められる。されば、所論の原審第五回公判調書において右被告人等のこの點に關する答辯を引用するに際し「第一回公判廷」において述べたところと同様であると記載した「第一回公判廷」とあるのは「第二回公判廷」の誤記である。こと明らかであるそれゆえ、原審には所論のような違法はなく論旨は理由がない。 二 原審において判事の更迭があつて第五回公判期日と第九回公判期日における裁判所の構成に變動のあつたこと並びに第九回公判期日においては單に前回開廷後引續き一五日以上開廷しなかつた理由だけで公判手續を更新したことは所論の通りである。しかし公判手續を更新すべき事由のあつたときはその手続を更新しさえすれば所期の目的を達するのであるから、その事由までも正確に公判調書に記載する必要はない。 三 豫審判事が被告人に示して訊問した現場略圖その他の圖面又は犯罪一覽表提出始末書についての證據調がなされていなくても、當該豫審訊問調書について適法な證據調が履踐されている以上、同訊問調書中の右圖面を除いても、獨立性のある供述記載部分又は右始末書に關係のない供述記載部分を証拠に採用することは違法でない。
一 公判調書中「第二回公判廷」を「第一回公判廷」と誤記したことの違法の有無 二 公判手續を更新する理由を調書に記載することの要否 三 訊問調書に引用されている圖面等について證據調がなされていない場合と同訊問調書の證據能力
舊刑訴法64條,舊刑訴法353條,舊刑訴法60條2項,舊刑訴法336條,舊刑訴法340條
判旨
強盗の目的で他人の住居に侵入する行為は、刑法130条前段の「故ナク人ノ住居ニ侵入シ」たものに該当し、住居侵入罪が成立する。また、強盗の手段として行われた住居侵入は、強盗罪との間で刑法54条1項後段のかすがい現象等による一罪(牽連犯)の関係に立つ。
問題の所在(論点)
1.強盗目的での住居立ち入りが刑法130条の住居侵入罪を構成するか。2.強盗罪のみが起訴されている場合において、その手段たる住居侵入の事実を併せて処断することは、審判の請求を受けない事実を審理した違法(旧刑訴法上の不告不理の原則違反)となるか。
規範
犯罪の実行(強盗等)を目的として他人の住居に立ち入る行為は、居住者の意思に反し、かつ正当な理由がないため、刑法130条の「故ナク人ノ住居ニ侵入」したことに該当する。また、ある犯罪が他の犯罪の手段として行われた場合、両罪は刑法54条1項後段の「犯罪の手段……であるとき」として一罪(牽連犯)を構成する。
重要事実
被告人らは、共犯者と共謀して強盗を行う目的で被害者宅に侵入し、現金および衣類雑品等(約86点)を強取した。弁護人は、住居侵入について構成要件を充足しない、あるいは起訴されていない事実を審判した違法があると主張して上告した。
あてはめ
1.被告人らは他の共犯者と強盗を共謀して被害者方に侵入している。この事案において、強盗目的での侵入という態様自体が「故ナク人ノ住居ニ侵入シ」たものに当たると解される。2.仮に住居侵入について明示的な起訴がなかったとしても、住居侵入の所為は起訴された強盗の手段たる関係にある。したがって、刑法54条1項後段により強盗罪と一罪(牽連犯)の関係にあるものとして所断することは、科刑上一罪を構成する事実の範囲内であり、不告不理の原則には反しない。
結論
強盗目的の住居立ち入りは住居侵入罪を構成する。また、強盗罪の手段である住居侵入を強盗罪と一罪として処断することは適法である。
実務上の射程
住居侵入罪の保護法益(住居の平穏説・住居権説)に関わらず、犯罪目的での立ち入りが「侵入」に該当することを示す。また、罪数論において、手段と結果の関係にある住居侵入と強盗が牽連犯(54条1項後段)となることを確認する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和24(れ)2134 / 裁判年月日: 昭和24年11月17日 / 結論: 棄却
本件公判請求書の犯罪事實として所論のように窃盜の事實が記載されまた罪名の表示にも住居侵入強盜傷人の外窃盜と記載されていることは所論の通りである。しかし、第一審判決はその法律適用の説明において「……右窃盜並強盜傷人は單一なる財物奪取行爲の各發展段階と見るべきものであるから之を包括的に觀察して重い強盜傷人の一罪が成立するも…
事件番号: 昭和24(れ)1101 / 裁判年月日: 昭和24年7月22日 / 結論: 棄却
犯人が「今晩は」とは挨拶したのに對し、家人が「おはいり」と答へたのに應じて住居にはいつた場合でも、犯人が強盜の意圖でその住居にはいつた以上、住居侵入罪が成立する。
事件番号: 昭和24(れ)2949 / 裁判年月日: 昭和25年5月4日 / 結論: 破棄自判
最高裁判所が破棄自判するに當り被告人は犯時及び原審判決當時には少年であつたが今や滿十八歳以上となつたものであるから、少年法を適用しないで處斷刑期並びに原判決の言渡した不定期刑(二年六月以上五年以下)の範圍内で被告人を懲役三年六月に處し、第一審における未決勾留日數中八〇日を刑法二一條に則り本刑に算入すべきものとする。