本件公判請求書の犯罪事實として所論のように窃盜の事實が記載されまた罪名の表示にも住居侵入強盜傷人の外窃盜と記載されていることは所論の通りである。しかし、第一審判決はその法律適用の説明において「……右窃盜並強盜傷人は單一なる財物奪取行爲の各發展段階と見るべきものであるから之を包括的に觀察して重い強盜傷人の一罪が成立するものと解するを相當とする」旨判示しているから第一審判決は公訴に係る窃盜の事實を獨立した犯罪と認めなかつたこと明白である。そしてこの第一審判決に對する被告人のみの控訴審である原審における檢事の公訴事實の陳述は右第一審判決書理由摘示のとおりであることは記録上明らかなところであるから、原審における審判の直接の目的物は強盜傷人の一罪のみであつてこれに窃盜が含せられていないと認める限り窃盜について何等審理する必要がないものと解するのが相當である。されば原判決には所論のように審判の請求を受けたる事件について判斷を遺脱し又は判決に示すべき判斷を遺脱したという違法はない。
窃盜並に強盜傷人を包括一罪とし窃盜について特別の審理しない判決の正否
刑法235條,刑法240條,舊刑訴410條18號
判旨
窃盗から強盗傷人へと至る一連の行為が単一の財物奪取行為の発展段階と認められる場合、これらを包括して強盗傷人の一罪として扱うべきであり、窃盗を独立した犯罪として審理・判決する必要はない。
問題の所在(論点)
起訴状に窃盗と強盗傷人の双方が記載されている場合において、裁判所がこれらを包括的一罪として処理し、窃盗部分について個別の有罪・無罪の判断を示さなかったことは、審判の請求を受けた事件についての判断遺脱(旧刑訴法上の違法)に当たるか。
規範
同一の被害者に対する財物奪取の過程で、窃盗から強盗傷人へと犯罪態様が移行した場合、それは単一の目的を達成するための連続的かつ発展的な行為である。したがって、これを包括的に観察し、より重い強盗傷人の一罪として構成するのが相当である。この場合、包括される窃盗の事実は独立した審判の対象にはならず、主文等で別途判断を示す必要はない。
事件番号: 昭和24(れ)293 / 裁判年月日: 昭和24年7月23日 / 結論: 棄却
既に共謀して強盜をした以上、かりに、所論のごとく他の共犯者の暴行の結果たる傷害について被告人に故意、過失がなかつたとしても被告人も、また強盜傷人罪について共同正犯の責を負わなければならないのである。(昭和二三年(れ)第二四九號同年六月一二日第二小法廷判決)
重要事実
被告人らは当初、窃盗の目的で住居に侵入したが、その過程で強盗傷人へと至った。公判請求書(起訴状)の犯罪事実には窃盗と強盗傷人の双方が記載され、罪名にも双方が掲げられていた。第一審判決は、これらを単一の財物奪取行為の各発展段階と見て包括的に観察し、重い強盗傷人の一罪が成立すると判示して、窃盗について独立した罪としては認めなかった。被告人側は、窃盗の事実について判断を遺脱した違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件における窃盗と強盗傷人の事実は、単一の財物奪取行為が段階的に発展したものであると評価できる。第一審がこれらを包括して強盗傷人の一罪と解した以上、公訴に係る窃盗事実は強盗傷人の一部として吸収されており、独立した犯罪として残存しない。原審(控訴審)においても、第一審判決の趣旨に照らせば審判の直接の目的は強盗傷人の一罪のみに絞られており、包括された窃盗について別途審理・判断を行う必要はないといえる。
結論
窃盗と強盗傷人を包括的一罪として処理した場合、窃盗部分について独立した判断を示さなくとも判断遺脱の違法はない。上告棄却。
実務上の射程
数個の犯罪事実が記載されていても、それらが包括的一罪の関係にあると判断される場合、重い罪の一罪として処断すれば足り、各事実に対する個別の応答は不要とする実務上の処理を肯定する。罪数論における「包括的一罪」の処理と、審判対象の確定に関する標準的な判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)2145 / 裁判年月日: 昭和24年12月13日 / 結論: 棄却
一 記録を調べてゐると、原審の裁判長が被告人A、Bの兩名に對して、その氏名、年齢、職業、住居、本籍および出生地について訊問し右被告人等が答辯しているのは、原審第二回公判廷においてだけであることが認められる。されば、所論の原審第五回公判調書において右被告人等のこの點に關する答辯を引用するに際し「第一回公判廷」において述べ…
事件番号: 昭和24(れ)2907 / 裁判年月日: 昭和25年2月28日 / 結論: 棄却
住居侵入罪と強盜致死罪竝に強盜傷人罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件をそれぞれ異にし、住居侵入の行爲は強盜致死及び強盜傷人罪の要素に屬せず別個獨立の行爲であるから、前者が後者に處罰上吸收せられると做す所論は理由がない。しかも右の兩者の間には通常手段結果の關係のあることが認められるから、原判決が判示住居侵入と強盜致死…