住居侵入罪と強盜致死罪竝に強盜傷人罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件をそれぞれ異にし、住居侵入の行爲は強盜致死及び強盜傷人罪の要素に屬せず別個獨立の行爲であるから、前者が後者に處罰上吸收せられると做す所論は理由がない。しかも右の兩者の間には通常手段結果の關係のあることが認められるから、原判決が判示住居侵入と強盜致死竝に強盜傷人の各所爲をそれぞれ刑法第五四條第一項後段の所謂牽連犯として處斷したことは相當である。
住居侵入罪と強盜致死罪に強盜傷人罪との關係と牽連犯の成立
刑法54條1項,刑法130條,刑法240條
判旨
住居侵入罪と強盗致死傷罪は別個独立の犯罪であり、両者が手段と結果の関係にある場合には牽連犯となる。また、公訴提起された犯罪と牽連一罪の関係にある未起訴の犯罪についても、裁判所は審判の対象とすることができる。
問題の所在(論点)
住居侵入罪と強盗致死傷罪の罪数関係、及び公訴提起されていない牽連犯の一方の事実に対する審理の可否。
規範
1. 住居侵入罪と強盗致死罪・強盗傷人罪は、被害法益及び構成要件を異にする別個独立の犯罪であり、一方が他方に吸収されることはない。2. 両罪の間に通常手段と結果の関係が認められる場合は、刑法54条1項後段の牽連犯となる。3. 公訴提起された犯罪事実と牽連一罪の関係にある事実は、公訴事実としての陳述がなくとも審判の対象に含まれる。
重要事実
被告人は強盗殺人及び強盗傷人の事実で公訴提起されたが、その手段として行われた住居侵入の事実については、検察官による公訴事実の陳述がなされていなかった。原審は、この住居侵入の事実についても、強盗致死傷罪と牽連犯の関係にあるものとして審判を行い、有罪判決を下した。これに対し、弁護側が住居侵入は強盗罪等に吸収されるべきであること、及び審判対象の逸脱を理由に上告した事案である。
事件番号: 昭和24(れ)2949 / 裁判年月日: 昭和25年5月4日 / 結論: 破棄自判
最高裁判所が破棄自判するに當り被告人は犯時及び原審判決當時には少年であつたが今や滿十八歳以上となつたものであるから、少年法を適用しないで處斷刑期並びに原判決の言渡した不定期刑(二年六月以上五年以下)の範圍内で被告人を懲役三年六月に處し、第一審における未決勾留日數中八〇日を刑法二一條に則り本刑に算入すべきものとする。
あてはめ
まず、住居侵入と強盗致死傷は保護法益が異なり、前者が後者の要素を構成するものでもないため、吸収関係には立たない。次に、強盗を行うために住居に侵入することは「犯罪の手段」として通常認められる関係にある。したがって、両罪は牽連犯となる。さらに、強盗致死傷という訴因が提示されている以上、それと牽連一罪の関係にある住居侵入の事実は、公訴の効力が及ぶ範囲として審判の対象に含まれるため、原審がこれを判断したことに違法はない。
結論
住居侵入罪と強盗致死傷罪は牽連犯であり、一罪として公訴提起されたものと牽連関係にある事実は審判の対象となる。本件上告は棄却される。
実務上の射程
罪数論において住居侵入と強盗罪等の関係が牽連犯であることを明示する際の根拠となる。また、刑事訴訟法上の「公訴不可分の原則」に関連し、審判対象の範囲を牽連一罪等の実体法上の一罪に広げる実務上の運用(ただし現在の実務では追起訴や訴因変更が一般的)を確認する上で重要である。
事件番号: 昭和23(れ)1429 / 裁判年月日: 昭和23年12月24日 / 結論: 棄却
一 同一被告人に對し同時に繋屬した數個の被告事件を各別に審判するか又は併合して審判するかは、審理の便宜上裁判所が自由に決し得る職權に屬することであつて、必ずしも併合して審判することを要するものでないこと屡々判例の示す通りである。 二 住居侵入罪と強盜罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件を異にし、住居侵入の行爲は強盜罪…
事件番号: 昭和25(れ)909 / 裁判年月日: 昭和25年9月21日 / 結論: 棄却
一 刑訴應急措置法施行後においては、舊刑訴法第四一二條乃至第四一四條に規定する事由は、上告審において職權で調査することは許されない。 二 住居侵入罪と強盜罪とは、おのおのその被害法益とその犯罪構成要件とを異にしているのであつて、強盜罪は當に當然住居侵入を伴うものではなく、ただ兩者は通常手段結果の關係があるに過ぎない。さ…
事件番号: 昭和28(あ)3824 / 裁判年月日: 昭和28年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】住居侵入罪が強盗罪の手段となる関係にある場合、起訴状において訴因や罰条として明示され、被告人に送達されている限り、適法に訴訟の対象となり得る。 第1 事案の概要:被告人は、強盗等の罪で起訴された。被告人側は、住居侵入の事実が昭和28年1月24日付の起訴状には訴因罰条として含まれていたものの、同年3…