故なく人の住居に侵入すれば刑法第一三〇條所定の住居侵入罪を構成することは論のないところであつて他人の住居に侵入して強盜未遂罪を犯したからといつて住居侵入の罪が強盜未遂罪に吸收されることはない。所論は獨自の見解に立つもので採用することはできない。
住居侵入罪と強盜未遂罪との關係
刑法130條,刑法243條
判旨
他人の住居に侵入して強盗未遂罪を犯した場合、住居侵入の罪が強盗未遂罪に吸収されることはなく、両罪は併合罪(実務上は牽連犯)として成立する。
問題の所在(論点)
住居侵入罪と強盗未遂罪の関係について、住居侵入行為が強盗未遂罪に吸収されて一罪となるのか、あるいは別個に罪が成立するのか。
規範
刑法130条前段の住居侵入罪は、正当な理由なく他人の住居等に侵入することで成立する独立した罪であり、その後に強盗等の重罪を犯したとしても、住居侵入の行為が後継の犯罪に当然に包含(吸収)されるものではない。
重要事実
被告人は、夜間、風呂敷のようなもので覆面をして被害者宅に侵入した。被害者を呼び起こし、金品を要求する趣旨の文言を述べたが、被害者が差し出したサンマの乾物を拒絶して逃走した。この際、被告人は日本カミソリを所持・提示していたとされる。弁護側は、住居侵入の罪は強盗未遂罪に吸収されるべきであると主張して上告した。
あてはめ
被告人は「故なく人の住居に侵入」しており、この時点で刑法130条の住居侵入罪の構成要件を完全に充足している。その後に強盗未遂罪という別の構成要件に該当する行為が行われたとしても、住居侵入という法益侵害の事実が消滅したり、強盗未遂罪の評価の中に当然に含まれたりする関係にはない。したがって、両罪はそれぞれ独立して成立すると解される。
結論
住居侵入罪は強盗未遂罪に吸収されず、両罪は別個に成立する。原判決に法の解釈を誤った違法はない。
実務上の射程
住居侵入罪と強盗罪(または窃盗罪等)が手段と目的の関係にある場合、実務上は刑法54条1項後段の牽連犯として処理される。本判決は「吸収されない」ことを明示しており、罪数判断において住居侵入罪を独立して評価すべきことを示す基礎的な判例である。
事件番号: 昭和24(れ)2907 / 裁判年月日: 昭和25年2月28日 / 結論: 棄却
住居侵入罪と強盜致死罪竝に強盜傷人罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件をそれぞれ異にし、住居侵入の行爲は強盜致死及び強盜傷人罪の要素に屬せず別個獨立の行爲であるから、前者が後者に處罰上吸收せられると做す所論は理由がない。しかも右の兩者の間には通常手段結果の關係のあることが認められるから、原判決が判示住居侵入と強盜致死…
事件番号: 昭和27(あ)4943 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: 棄却
現行刑法において住居侵入罪と窃盗罪とはその被害法益及び犯罪の構成要件を異にし、住居侵入の行為は窃盗罪の要素に属せず、別個独立の行為であり、しかも通常、右両罪の間には手段結果の関係があることが認められるから、第一審判決が両罪を刑法五四条一項後段のいわゆる牽連犯として取扱つたのは正当である。
事件番号: 昭和24(れ)2949 / 裁判年月日: 昭和25年5月4日 / 結論: 破棄自判
最高裁判所が破棄自判するに當り被告人は犯時及び原審判決當時には少年であつたが今や滿十八歳以上となつたものであるから、少年法を適用しないで處斷刑期並びに原判決の言渡した不定期刑(二年六月以上五年以下)の範圍内で被告人を懲役三年六月に處し、第一審における未決勾留日數中八〇日を刑法二一條に則り本刑に算入すべきものとする。