判旨
事後強盗罪(刑法238条)の未遂と既遂の区別は、窃盗が既遂に達していたか否かによって決せられる。
問題の所在(論点)
窃盗が未遂に終わった段階で、逮捕を免れる等の目的で暴行・脅迫を加えた場合に、事後強盗罪の未遂が成立するか。すなわち、事後強盗罪における既遂・未遂の区別を窃盗の既遂・未遂を基準として決すべきかが問題となる。
規範
事後強盗罪(刑法238条)は、窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために暴行又は脅迫を加えることにより成立する。同罪の既遂・未遂の区別については、結合図の先行行為たる窃盗の既遂・未遂を基準とする。したがって、窃盗が未遂であれば、その後に加えられた暴行・脅迫の結果を問わず、事後強盗罪の未遂(刑法243条、238条)が成立する。
重要事実
被告人が、住居に侵入して窃盗に着手したものの、財物の取得(窃盗既遂)には至らなかった(判決文からは詳細な具体的態様は不明)。被告人は、その場において、逮捕を免れる等の目的で暴行又は脅迫を加えた。原審は、この事実に対し刑法130条、243条、238条、236条1項を適用し、未遂減軽(刑法43条本文、68条3号)を認めた。
あてはめ
本件において、被告人の窃盗行為は未遂に終わっている(判決文の擬律錯誤の否定より)。事後強盗罪は窃盗を基礎とする犯罪であり、その既遂・未遂は窃盗の既遂・未遂に依存すると解される。したがって、先行する窃盗が既遂に達していない以上、その後の暴行・脅迫が強盗としての態様を備えていても、全体として事後強盗罪の既遂となることはない。原判決が、窃盗未遂を前提として刑法243条(未遂)を適用し、未遂減軽を行った判断は、法解釈上適当である。
結論
窃盗が未遂である場合には、事後強盗罪の未遂が成立する。原判決の擬律に錯誤はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、事後強盗罪の既遂・未遂の基準を「窃盗の既遂・未遂」に置くことを示した重要判例である(窃盗既遂基準説)。答案作成上、暴行・脅迫によって怪我が生じた場合は強盗致死傷罪(刑法240条)の成否が問題となるが、事後強盗罪が未遂であっても、致死傷の結果が生じれば同条の既遂として処断される点に注意が必要である。
事件番号: 昭和23(れ)1425 / 裁判年月日: 昭和24年2月8日 / 結論: 棄却
被告人の控訴申立が理由あるものであつたことは所論のとおりである、而して此場合控訴申立後の未決勾留日數は舊刑訴第五五六條の規定に依り刑の執行の際當然本刑に通算されないものであつて、原審が判決で之が通算を言渡すべきものではない。
事件番号: 昭和24(れ)1101 / 裁判年月日: 昭和24年7月22日 / 結論: 棄却
犯人が「今晩は」とは挨拶したのに對し、家人が「おはいり」と答へたのに應じて住居にはいつた場合でも、犯人が強盜の意圖でその住居にはいつた以上、住居侵入罪が成立する。
事件番号: 平成16(あ)92 / 裁判年月日: 平成16年12月10日 / 結論: 破棄差戻
被害者方で財物を窃取した犯人が,だれからも発見,追跡されることなく,いったん同所から約1km離れた場所まで移動し,窃取の約30分後に再度窃盗をする目的で被害者方に戻った際に逮捕を免れるため家人を脅迫したなど判示の事実関係の下においては,その脅迫は,窃盗の機会の継続中に行われたものとはいえない。