被告人の控訴申立が理由あるものであつたことは所論のとおりである、而して此場合控訴申立後の未決勾留日數は舊刑訴第五五六條の規定に依り刑の執行の際當然本刑に通算されないものであつて、原審が判決で之が通算を言渡すべきものではない。
控訴理由ある場合控訴申立後の未決勾留日數の通算を判決において言渡さなかつたことの正否
舊刑訴法556條,刑法21條
判旨
強盗の共謀に基づき、刃物を携えて家屋内に侵入し、居住者らに迫って脅迫を開始した時点において、金員強取の犯意は明らかであり、強盗罪の実行の着手が認められる。
問題の所在(論点)
強盗罪(刑法236条、243条)における「実行の着手」の有無。住居侵入後、凶器を携えて被害者に迫った段階で強盗未遂罪が成立するか。
規範
強盗罪の実行の着手は、財物奪取の目的をもって、刑法236条1項に規定する暴行または脅迫に当たる行為を開始したときに認められる。密閉された住居等の空間において、凶器を携え被害者に接近して脅迫を加える行為は、財物奪取に向けた客観的な危険性を有する行為として、実行の着手を構成する。
重要事実
被告人は、共犯者AおよびCと強盗を共謀した。夜間、被告人らは相次いで被害者B方の裏口から屋内に侵入した。共犯者Aは出刃包丁を携行しており、台所にいたBおよび来客Dに対し、刃物を突きつけるなどして迫り、脅迫して金員を強奪しようとした。
事件番号: 昭和25(れ)1643 / 裁判年月日: 昭和26年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗の目的で凶器を携帯して他家へ侵入し、家人に対し凶器を示して脅迫を開始した以上、財物の物色に至らなくても強盗の実行の着手があったと認められる。 第1 事案の概要:被告人は友人ら4名と共謀し、強盗目的で日本刀や匕首を携帯して被害者方に赴いた。訪問客を装って家人が表入口を開けたところへ屋内に侵入し、…
あてはめ
被告人らは、夜間に住居へ侵入するという強盗の共謀に基づいた行動をとっている。共犯者が「出刃包丁」という殺傷能力のある凶器を携え、被害者らの至近距離に迫って脅迫を開始した事実は、金員強取という犯意を確実にするものである。この「被害者に迫って脅迫する」行為自体が、強盗罪の構成要件的行為(脅迫)の一環であり、財物奪取の現実的危険性を発生させているといえる。したがって、実際に財物を手に入れる前であっても、実行の着手が認められる。
結論
被告人の所為は強盗未遂罪に該当する。侵入後に凶器を持って被害者に迫った段階で実行の着手があるとした原判決は正当である。
実務上の射程
強盗罪の着手時期について、侵入後の脅迫開始時点での成立を認めた事例。実務上は、住居侵入後に被害者を物色する前の段階であっても、凶器を示して対峙すれば実行の着手を肯定できる根拠として引用される。強盗致死傷罪等の重罪においても、着手時期の判断基準として重要である。
事件番号: 昭和23(れ)671 / 裁判年月日: 昭和23年10月21日 / 結論: 棄却
一 巡査が強盗しようと企てて拳銃を携行したときは、それが巡査の執務時間中であつても、銃砲等所持禁止令第一条但書の職務のため所持する場合にあたらない。 二 午後七時過頃に婆さん(當五八年)と娘(當二六年)だけの住家に成年男子三人も侵入して婆さんの口元を手で押えようとしたらそれは被害者の反抗を抑壓する暴行であると認定しても…
事件番号: 昭和23(れ)1205 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 棄却
一 被告人は相被告人と共謀して強取行爲をも分擔したものというべく、從つて、假りに所論のごとく被告人は相被告人の兇器所持並びに兇器使用の事實を知らなかつたとしても原判決が證據によらずして強盜共謀の事實を認定した違法ありといえない。 二 犯罪の日時は、法律上別段の定め(例えば日出前又は夜間においてというごとき)のない限り、…
事件番号: 昭和24(れ)1101 / 裁判年月日: 昭和24年7月22日 / 結論: 棄却
犯人が「今晩は」とは挨拶したのに對し、家人が「おはいり」と答へたのに應じて住居にはいつた場合でも、犯人が強盜の意圖でその住居にはいつた以上、住居侵入罪が成立する。