判旨
強盗の目的で凶器を携帯して他家へ侵入し、家人に対し凶器を示して脅迫を開始した以上、財物の物色に至らなくても強盗の実行の着手があったと認められる。
問題の所在(論点)
強盗目的で侵入し、家人に対し凶器を提示して脅迫を開始したものの、財物の物色を開始する前に逃走した場合に、強盗罪の実行の着手(刑法43条前段、236条1項)が認められるか。
規範
強盗罪の実行の着手は、強取の手段としての暴行または脅迫を開始した時点をもって認められる。財物の物色を開始していることは必ずしも要しない。
重要事実
被告人は友人ら4名と共謀し、強盗目的で日本刀や匕首を携帯して被害者方に赴いた。訪問客を装って家人が表入口を開けたところへ屋内に侵入し、被告人は被害者に対し、日本刀を手にしたまま「親爺を出せ」と言いながら詰め寄り、危害を加える態度を示して脅迫した。その後、被害者が逃走したため、被告人らも逮捕を恐れて逃走し、財物の物色には至らなかった。
あてはめ
被告人らは、強盗の目的で日本刀という殺傷能力の高い凶器を携帯して被害者方に侵入している。さらに、被害者に対して実際に日本刀を手にした状態で詰め寄り、「親爺を出せ」と述べるなど、要求に従わなければ危害を加えることを示す脅迫行為に及んでいる。この行為は、強盗罪における財物強取に向けた密接な行為であるとともに、その手段としての脅迫を開始したものと評価できる。したがって、たとえ強取すべき財物の物色を開始していなかったとしても、強盗罪の構成要件的行為の一部を開始したものといえる。
結論
被告人の行為は強盗未遂罪を構成し、強盗予備罪にとどまるものではない。
実務上の射程
強盗罪の着手時期について「物色時」ではなく「暴行・脅迫時」とする通説的見解(暴行・脅迫説)を裏付ける基本判例である。住居侵入を伴う強盗事案において、財物奪取に向けた具体的な動作(物色)がない段階でも、強盗の手段としての暴行・脅迫が開始されれば未遂となることを示す際に引用すべきである。
事件番号: 昭和23(れ)671 / 裁判年月日: 昭和23年10月21日 / 結論: 棄却
一 巡査が強盗しようと企てて拳銃を携行したときは、それが巡査の執務時間中であつても、銃砲等所持禁止令第一条但書の職務のため所持する場合にあたらない。 二 午後七時過頃に婆さん(當五八年)と娘(當二六年)だけの住家に成年男子三人も侵入して婆さんの口元を手で押えようとしたらそれは被害者の反抗を抑壓する暴行であると認定しても…
事件番号: 昭和23(れ)913 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 棄却
被告人等を少年法による保護處分その他實刑を科せざる處分を受けしめるのが相當であるか否か等はすべて事實審たる原裁判所の裁量權にのみ屬するところである。
事件番号: 昭和24(れ)3096 / 裁判年月日: 昭和25年5月2日 / 結論: 棄却
被告人らの刀劍所持は強盜の犯行の前後にわたるものであつて、強盜の手段として所持したのではなく、かつ刀劍の所持と強盜行爲との間に通常手段結果の關係があるというわけではないのであるから、原審が本件に刑法第五四條を適用せずして第四五條を適用したのは適法である。