強盗の目的で、共犯者三名を帶同して、深夜家宅内に侵入した行爲はたといそれが嘗ては自らも住み慣れたなつかしい實父の家であつても數人共同して住居侵入罪を實行した場合に該當し、刑法第一三〇條第六〇條により問擬さるべきもので、同法第六五條第一項により擬律さるべきものではない。
強盜の目的で共犯者を帶同して深夜實父の家に侵入した行爲の擬律
刑法130條,刑法60條,刑法65條
判旨
実父の住居であっても、強盗目的で共犯者を伴い深夜に侵入する行為は、正当な理由のない侵入として住居侵入罪を構成する。また、窃盗の着手後であっても、財物の所持を完全に掌握する前に暴行・脅迫を加えて奪取した場合は、強盗罪が成立する。
問題の所在(論点)
1. 実子の関係にある者が強盗目的で実父の住居に立ち入る行為は「侵入」にあたるか。2. 窃盗の物色後、財物の占有を確実にする前になされた暴行・脅迫により金品を得た場合に強盗罪が成立するか。
規範
住居侵入罪(刑法130条)における「侵入」とは、管理者の意思に反して立ち入ることをいう。親族間の住居であっても、その目的や態様が社会通念上正当なもの(故あるもの)と認められない場合には、同罪が成立する。また、強盗罪は、財物奪取の手段として暴行・脅迫が行われることを要するが、窃盗の実行中において財物の占拠を完了する前にこれらが行われた場合には、強盗罪の構成要件を充足する。
重要事実
被告人は共犯者3名と共謀し、かつて住み慣れていたが現在は出奔中である実父D方に強盗目的で侵入した。被告人は共犯者に対し、そこが実父の家であることを秘匿していた。午後11時30分頃、家人が就寝中に衣類等を物色していたところ、家女Cが目覚めたため、ナイフを示して「動くとピストルを撃つぞ」等と脅迫し、畏怖した同女から金品を奪って立ち去った。
あてはめ
1. 住居侵入について:被告人と被害者が親子関係にある場合、単なる謝罪目的等の帰宅であれば「故なく」とはいえない。しかし、本件は強盗目的かつ共犯者を伴う深夜の侵入であり、実父や社会通念から見て正当な理由があるとは認められない。したがって、刑法130条の侵入に該当する。2. 強盗罪について:被告人らは箪笥から衣類を取り出していたが、家人が目覚めたため暴行・脅迫を加えている。これは財物の所持を侵奪し終える前に、その侵奪を完了させるために行われたものであり、脅迫と財物取得の間に因果関係が認められるため、強盗罪が成立する。
結論
被告人の行為は住居侵入罪(130条、60条)および強盗罪(236条1項、60条)を構成し、両罪は牽連犯(54条1項後段)の関係に立つ。
実務上の射程
住居侵入罪における「立入りの目的」が、管理者の推定的意思を判断する上で決定的な要素となることを示した事例である。また、窃盗から強盗への転換時期について、占有の完全な取得(侵奪の完了)以前に暴行・脅迫があれば事後強盗ではなく強盗罪(236条)が成立することを示唆しており、実行の着手時期と既遂時期の認定において重要である。
事件番号: 昭和24(れ)2145 / 裁判年月日: 昭和24年12月13日 / 結論: 棄却
一 記録を調べてゐると、原審の裁判長が被告人A、Bの兩名に對して、その氏名、年齢、職業、住居、本籍および出生地について訊問し右被告人等が答辯しているのは、原審第二回公判廷においてだけであることが認められる。されば、所論の原審第五回公判調書において右被告人等のこの點に關する答辯を引用するに際し「第一回公判廷」において述べ…
事件番号: 昭和23(れ)1205 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 棄却
一 被告人は相被告人と共謀して強取行爲をも分擔したものというべく、從つて、假りに所論のごとく被告人は相被告人の兇器所持並びに兇器使用の事實を知らなかつたとしても原判決が證據によらずして強盜共謀の事實を認定した違法ありといえない。 二 犯罪の日時は、法律上別段の定め(例えば日出前又は夜間においてというごとき)のない限り、…
事件番号: 昭和23(れ)913 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 棄却
被告人等を少年法による保護處分その他實刑を科せざる處分を受けしめるのが相當であるか否か等はすべて事實審たる原裁判所の裁量權にのみ屬するところである。
事件番号: 昭和24(れ)1101 / 裁判年月日: 昭和24年7月22日 / 結論: 棄却
犯人が「今晩は」とは挨拶したのに對し、家人が「おはいり」と答へたのに應じて住居にはいつた場合でも、犯人が強盜の意圖でその住居にはいつた以上、住居侵入罪が成立する。