犯人が「今晩は」とは挨拶したのに對し、家人が「おはいり」と答へたのに應じて住居にはいつた場合でも、犯人が強盜の意圖でその住居にはいつた以上、住居侵入罪が成立する。
住居侵入罪が成立する一事例
刑法130条
判旨
強盗の意図を隠して家人から入室の承諾を得たとしても、その承諾は真実のものではないため、刑法130条の住居侵入罪が成立する。
問題の所在(論点)
強盗目的を隠して家人の承諾を得て立ち入った場合、刑法130条前段の「侵入」にあたるか。
規範
住居侵入罪における「侵入」とは、住居権者の意思に反する立ち入りを指す。外見上、家人の承諾があるように見える場合であっても、その承諾が犯罪目的を秘匿して得られたものであるときは、真実において住居権者の承諾を欠くものと解すべきである。
重要事実
被告人は、共謀の上、強盗の意図を隠して深夜に被害者宅を訪れた。玄関先で「今晩は」と挨拶したところ、家人が「おはいり」と答えたため、これに応じて住居内に立ち入った。その後、被告人はナイフ等を突きつけて「金を出せ、騒ぐと殺すぞ」と脅迫し、現金を強奪した。
あてはめ
被告人は強盗という重大な犯罪目的を有していたが、これを隠して平穏な挨拶を行い、家人の承諾を得ている。しかし、このような不法な目的を知っていれば家人が立ち入りを承諾しなかったことは明らかであり、外見上の承諾は真実の承諾とは認められない。したがって、家人の真意に反する立ち入りとして、住居侵入罪の構成要件を充足する。
結論
強盗目的を秘匿した立ち入りは住居侵入罪を構成し、その後の強盗罪と併せて処断される。
実務上の射程
本判決は、承諾の有効性を判断するにあたり、住居権者がその真の目的を知っていたならば承諾したかという「真意」を重視する立場を明確にした。司法試験においては、本件のような強盗目的のほか、盗撮や窃盗目的で店舗や公共施設に立ち入る事案において、管理者の「真意に反する」立ち入りとして侵入罪の成否を論じる際の基礎となる重要判例である。
事件番号: 昭和24(れ)2145 / 裁判年月日: 昭和24年12月13日 / 結論: 棄却
一 記録を調べてゐると、原審の裁判長が被告人A、Bの兩名に對して、その氏名、年齢、職業、住居、本籍および出生地について訊問し右被告人等が答辯しているのは、原審第二回公判廷においてだけであることが認められる。されば、所論の原審第五回公判調書において右被告人等のこの點に關する答辯を引用するに際し「第一回公判廷」において述べ…