一 強盗に着手した者がその實行行爲中被害者に暴行を加へて傷害の結果を生ぜしめた以上財物の奪取未遂の場合でも強盗傷人罪の既遂をもつて論すべきである。 二 強盗傷人罪は所謂結果犯であるから強盗共犯者間に被害者に對し傷害を加へるについて意思の連絡がなく又傷害を加へた行爲者に傷害の意思がなくても強盗の實行行爲中共犯者の一人が被害者に暴行を加へて傷害の結果を生ぜしめたときは共犯者全員につき強盗傷人罪が成立するのである。
一 強盗傷人罪の成立 二 強盗共犯者の傷害の結果に對する共同責任
刑法240條,刑法60條
判旨
強盗に着手した者が実行行為中に暴行を加え傷害を負わせた場合、財物奪取が未遂であっても強盗傷人罪の既遂が成立する。また、強盗傷人罪は結果的加重犯としての性質を有するため、共犯者間に傷害の故意や意思連絡がなくとも、共犯者の一人が強盗の機会に傷害を負わせれば全員に同罪の既遂が成立する。
問題の所在(論点)
1. 強盗傷人罪において、財物の奪取が未遂に終わった場合に既遂罪が成立するか。 2. 強盗の共謀はあるが、傷害についての意思連絡や故意がない場合、共犯者全員に強盗傷人罪が成立するか。
規範
1. 強盗傷人罪(刑法240条前段)は、強盗に着手した者がその実行行為中に被害者に暴行を加え傷害の結果を生ぜしめた以上、財物の奪取が未遂であっても既遂罪として成立する。 2. 同罪は結果的加重犯であり、共犯者間に被害者に対し傷害を加えることについての意思連絡がなく、かつ直接の加害者に傷害の故意(殺意を除く)がなかったとしても、強盗の実行行為中に共犯者の一人が傷害の結果を生ぜしめたときは、共犯者全員について同罪の既遂が成立する。
重要事実
被告人A、B、Cの3名は、老夫婦が居住する民家に押し入り、棒で脅して金を奪うことを共謀した。実行時、被告人Bは所持していた棒で被害者およびその妻を殴打し、傷害を負わせた。弁護人は、①強盗が未遂であること、②中途で犯意を放棄し逃走を企図したこと、③傷害を負わせる点について共謀や故意がなかったことを理由に、強盗傷人罪の既遂成立を争った。
あてはめ
1. 本件において被告人らは強盗に着手し、その実行行為中に被害者らに対して暴行を加え、傷害の結果を発生させている。強盗傷人罪の既遂・未遂の区別は「傷害」の結果の有無によって決まるため、財物奪取に至らなくとも既遂となる。 2. 被告人らは強盗を共謀して被害者方に押し入っており、その実行行為中に共犯者の一人であるBが暴行を加えて傷害を負わせた事案である。同罪は結果的加重犯であるから、傷害についての意思連絡やBの傷害の故意を問わず、強盗の共謀の範囲内で生じた結果として、共犯者全員が強盗傷人罪の責めを負う。
結論
被告人ら全員につき、強盗傷人罪の既遂が成立する。上告棄却。
実務上の射程
強盗致死傷罪における「既遂」の基準が「死傷の結果」にあることを明示した重要判例である。答案上は、強盗が未遂であっても傷害が生じている場合に240条を適用する根拠として用いる。また、共犯関係において、基本犯(強盗)の共謀があれば、加重結果(傷害)について過失があれば(あるいは過失すら不要で)重い罪の責任を負うという結果的加重犯の理論構成を示す際に活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)12 / 裁判年月日: 昭和26年7月24日 / 結論: 棄却
大審院判例と相反する判断をしたとしたという主張は、最高裁判所の判例がない場合に初めて上告理由とすることができるのであり(刑訴法第四〇五条第三号)判例違反を上告理由とする場合には刑訴規則第二五三条により当該判例を具体的に示すことが要求されているのである。そして論旨援用の大審院判例と同趣旨の判例は最高裁判所にも数多く存する…
事件番号: 昭和26(れ)703 / 裁判年月日: 昭和26年7月5日 / 結論: 棄却
強盗傷人罪が成立するには、強盗の機会に傷害の結果を発生せしめるを以て足りるものであつて、必ずしも強盗の手段である暴行又は脅迫により人を傷害し、又は傷害の意思を必要とするものではない。