被害者方で財物を窃取した犯人が,だれからも発見,追跡されることなく,いったん同所から約1km離れた場所まで移動し,窃取の約30分後に再度窃盗をする目的で被害者方に戻った際に逮捕を免れるため家人を脅迫したなど判示の事実関係の下においては,その脅迫は,窃盗の機会の継続中に行われたものとはいえない。
窃盗の犯人による事後の脅迫が窃盗の機会の継続中に行われたとはいえないとされた事例
刑法238条
判旨
窃盗犯人が財物窃取後に犯行現場を離れ、追跡等のない状態で一定時間を経過した後は、再度窃盗目的で現場に戻ったとしても「窃盗の機会」は継続しておらず、事後強盗罪は成立しない。
問題の所在(論点)
窃盗犯が一旦現場を離脱し、約30分後に再度窃盗目的で戻った際になされた脅迫について、事後強盗罪の構成要件である「窃盗の機会」の継続性が認められるか。
規範
事後強盗罪(刑法238条)における暴行・脅迫は、窃盗の現場またはこれと密接に接続する「窃盗の機会」になされることを要する。窃盗の機会といえるかは、窃取の完了からの時間的・場所的近接性、および被害者等から発見・追跡されて逮捕や奪還を受け得る状況が継続しているかという観点から判断すべきである。
重要事実
被告人は金品窃取後、無施錠の窓から侵入して財布等を盗み、約数分後に玄関から退出した。その後、誰からも追跡されることなく約1km離れた公園に移動して約30分間滞在した。再度窃盗を行う目的で同宅に戻り、玄関扉を開けた際に家人のBに発見されたため、逮捕を免れる目的でナイフを示して脅迫し、逃走した。
事件番号: 平成12(あ)411 / 裁判年月日: 平成14年2月14日 / 結論: 棄却
窃盗犯人が他人の居宅で財物を窃取した後もその天井裏に潜み,犯行の約3時間後に駆け付けた警察官に対し逮捕を免れるため暴行を加えたなど判示の事実関係の下においては,その暴行は窃盗の機会の継続中に行われたものというべきである。
あてはめ
被告人は財物を窃取した後、追跡を受けることなく現場を離れ、約30分もの間公園で過ごしている。この時点で、被害者等から容易に発見されて財物を奪還され、あるいは逮捕され得る状況は解消されたといえる。その後に再度窃盗目的で現場に戻ったとしても、当初の窃盗行為との時間的・場所的連続性は断絶しており、その際に行われた脅迫は「窃盗の機会」に継続して行われたものとは認められない。
結論
被告人の行為に事後強盗罪は成立せず、窃盗罪と脅迫罪等の併合罪にとどまる。したがって、事後強盗罪の成立を認めた原判決には法令の解釈適用の誤りがある。
実務上の射程
本判決は、窃盗の機会の判断において「追跡の有無」と「状況の解消」を重視している。答案上は、第1の窃盗行為の終了時から暴行・脅迫時までの時間的・場所的隔たりを指摘し、犯人が平穏な状態を得ていたか(逮捕等の危険が継続していたか)を具体的事実に基づき検討する際の基準となる。再度の窃盗目的があったとしても、前の窃盗との機会継続性を基礎付けるものではない点に注意を要する。
事件番号: 昭和25(れ)1901 / 裁判年月日: 昭和26年3月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事後強盗罪(刑法238条)の未遂と既遂の区別は、窃盗が既遂に達していたか否かによって決せられる。 第1 事案の概要:被告人が、住居に侵入して窃盗に着手したものの、財物の取得(窃盗既遂)には至らなかった(判決文からは詳細な具体的態様は不明)。被告人は、その場において、逮捕を免れる等の目的で暴行又は脅…