窃盗犯人が他人の居宅で財物を窃取した後もその天井裏に潜み,犯行の約3時間後に駆け付けた警察官に対し逮捕を免れるため暴行を加えたなど判示の事実関係の下においては,その暴行は窃盗の機会の継続中に行われたものというべきである。
窃盗犯人による暴行が窃盗の機会の継続中に行われたものとされた事例
刑法238条,刑法240条
判旨
窃盗犯人が犯行現場の天井裏に潜伏し、約3時間後に発見されて逮捕を免れるため暴行を加えた場合、窃盗の機会の継続中に行われたものとして事後強盗罪(強盗致傷罪)が成立する。
問題の所在(論点)
窃盗の犯行から約3時間が経過し、かつ犯行現場の天井裏に潜伏していた状況下でなされた暴行が、刑法238条の「窃盗が……したとき(窃盗の機会)」に行われたといえるか。
規範
刑法238条の「窃盗が……したとき」とは、窃盗の実行中または実行直後であることを要し、時間的・場所的接着性、および被害者等による追跡や発見の可能性といった「窃盗の機会の継続性」の有無によって判断される。
重要事実
被告人は、被害者方で指輪を窃取した後、犯行現場の真上にある天井裏に潜伏した。犯行から約1時間後に帰宅した被害者は被害と犯人の潜伏を察知し、警察に通報した。犯行から約3時間後、駆け付けた警察官に発見された被告人は、逮捕を免れるためにナイフで警察官の顔面等を切り付け、傷害を負わせた。
事件番号: 平成16(あ)92 / 裁判年月日: 平成16年12月10日 / 結論: 破棄差戻
被害者方で財物を窃取した犯人が,だれからも発見,追跡されることなく,いったん同所から約1km離れた場所まで移動し,窃取の約30分後に再度窃盗をする目的で被害者方に戻った際に逮捕を免れるため家人を脅迫したなど判示の事実関係の下においては,その脅迫は,窃盗の機会の継続中に行われたものとはいえない。
あてはめ
被告人は窃盗後も犯行現場の直近である天井裏に留まっており、場所的接着性が極めて高い。また、被害者が帰宅後に犯人の存在を察知し、通報を受けた警察官によって発見されていることから、被害者等から容易に発見されて財物奪還や逮捕をされ得る状況が継続していたといえる。したがって、3時間という時間の経過にかかわらず、窃盗の機会の継続性が認められる。
結論
被告人の行為には事後強盗罪(強盗致傷罪)が成立する。
実務上の射程
事後強盗罪における「窃盗の機会」の判断において、時間的間隔があったとしても、現場潜伏等により「発見・逮捕され得る状況」が維持されていれば、機会の継続を認める有力な根拠となる。答案上は、場所的接着性と追跡・発見の可能性を具体的事実から抽出する際に本判例の論理を用いるべきである。
事件番号: 昭和31(あ)863 / 裁判年月日: 昭和33年10月31日 / 結論: 棄却
窃盗犯人が現行犯として被害者に逮捕せられ警察官に引き渡されるまでの間に、逮捕状態を脱するため暴行をすることも、刑法第二三八条の「逮捕ヲ免レ」るための暴行にあたる
事件番号: 昭和31(あ)3767 / 裁判年月日: 昭和34年6月12日 / 結論: 棄却
某工場で窃盗した者が、現場から一〇メートル位距つた同工場塀外の路上で、折柄警戒中の巡査に発見せられ、現行犯人として追跡を受け、約六〇メートル進んだ地点で逮捕されようとしたので、これを免れるため、手拳で右巡査の胸部を突くなどの暴行を加え、格闘したが、程なく抵抗を止め、同巡査からシヤツの襟をつかまれて附近の前記工場守衛詰所…