窃盗犯人が現行犯として被害者に逮捕せられ警察官に引き渡されるまでの間に、逮捕状態を脱するため暴行をすることも、刑法第二三八条の「逮捕ヲ免レ」るための暴行にあたる
刑法第二三八条の「逮捕ヲ免レ」るための暴行にあたる事例。
刑法238条,刑法240条,刑訴法213条,刑訴法214条
判旨
窃盗犯人が被害者に現行犯逮捕された後、警察官に引き渡されるまでの間に、逮捕状態を脱するために暴行・傷害を加えた場合、刑法238条の事後強盗罪が成立し、同240条が適用される。
問題の所在(論点)
窃盗犯人が既に被害者に逮捕されている状況において、その拘束を脱する目的で暴行を加えた場合、刑法238条の「逮捕を免れるため」という要件を満たし、事後強盗(および事後強盗致傷)が成立するか。
規範
刑法238条にいう「逮捕を免れるため」とは、現に逮捕されていない場合に限らず、既に逮捕された者がその拘束を脱しようとする場合も含む。したがって、窃盗犯人が逮捕された状態から脱するために暴行を加えたときは、事後強盗罪の構成要件に該当する。
重要事実
被告人は窃盗を犯した後、被害者によって現行犯逮捕された。その後、被害者から警察官へ身柄を引き渡されるまでの間に、被告人は逮捕状態から脱するために被害者に対して暴行を加え、これにより被害者に傷害を負わせた。
あてはめ
本件において、被告人は窃盗犯人であり、かつ被害者に一応逮捕された状態にあった。しかし、警察官に引き渡されるまでは未だ身柄の拘束が確定的なものとはいえず、被告人は「被逮捕状態を脱するため」に暴行に及んでいる。この行為は、客観的には逮捕の継続を阻止しようとするものであり、主観的にも逮捕を免れる目的があるといえる。したがって、事後強盗罪の暴行に該当し、結果として傷害を負わせた以上、強盗致傷罪が成立すると解される。
結論
被告人には事後強盗罪(238条)が成立し、人を負傷させているため強盗致傷罪(240条前段)をもって論ずべきである。
実務上の射程
事後強盗罪における「逮捕を免れるため」という目的が、未逮捕の状態だけでなく、既逮捕後の脱走目的をも含むことを示した重要な判例である。答案上では、犯行終了後の時間的・場所的密接性(強盗の機会)と併せて、目的の有無を判断する際の規範として用いる。
事件番号: 昭和31(あ)3767 / 裁判年月日: 昭和34年6月12日 / 結論: 棄却
某工場で窃盗した者が、現場から一〇メートル位距つた同工場塀外の路上で、折柄警戒中の巡査に発見せられ、現行犯人として追跡を受け、約六〇メートル進んだ地点で逮捕されようとしたので、これを免れるため、手拳で右巡査の胸部を突くなどの暴行を加え、格闘したが、程なく抵抗を止め、同巡査からシヤツの襟をつかまれて附近の前記工場守衛詰所…
事件番号: 平成12(あ)411 / 裁判年月日: 平成14年2月14日 / 結論: 棄却
窃盗犯人が他人の居宅で財物を窃取した後もその天井裏に潜み,犯行の約3時間後に駆け付けた警察官に対し逮捕を免れるため暴行を加えたなど判示の事実関係の下においては,その暴行は窃盗の機会の継続中に行われたものというべきである。