窃盗犯人が刑法第二三八条の行為を為し、よつて人を殺傷したときは同法第二四〇条を適用すれば足り、同法第二三五条及び同法第二三八条を引用する必要はない。
準強盗致死傷とその適条
刑法235条,刑法238条,刑法240条
判旨
事後強盗罪(刑法238条)の要件を満たす者が、その機会に殺傷行為に及んだ場合には、強盗殺傷罪(刑法240条)が成立する。
問題の所在(論点)
刑法238条の規定により強盗として論ぜられる場合(事後強盗)において、人を殺傷したときに刑法240条(強盗殺傷罪)を適用することが認められるか。
規範
窃盗が刑法238条(事後強盗罪)の規定に該当し、強盗として論ぜられるべき場合には、その者が殺傷行為に及んだときは、強盗殺傷罪(刑法240条)の一罪を構成する。
重要事実
被告人が窃盗に及び、事後強盗罪の構成要件(窃盗が財物奪還を拒み、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために暴行又は脅迫をすること)に該当する行為を行った。その過程において、被告人は人を殺傷するに至った。弁護人は、事後強盗罪の場面において刑法240条を適用することの違法を主張して上告した。
あてはめ
事件番号: 昭和26(れ)703 / 裁判年月日: 昭和26年7月5日 / 結論: 棄却
強盗傷人罪が成立するには、強盗の機会に傷害の結果を発生せしめるを以て足りるものであつて、必ずしも強盗の手段である暴行又は脅迫により人を傷害し、又は傷害の意思を必要とするものではない。
刑法238条は、特定の目的(財物奪還拒絶、逮捕免脱、罪跡隠滅)をもって暴行・脅迫を行った窃盗犯を「強盗として論ずる」と規定している。したがって、法規上は強盗犯として扱われる以上、その暴行等により殺傷の結果が生じた場合には、通常の強盗と同様に刑法240条の適用を受けるものと解される。本件においても、被告人の所為が事後強盗罪の構成要件を充足する以上、人を殺傷した事実に対して同条を適用することは、法規の解釈として当然である。
結論
事後強盗の結果、人を殺傷した場合には強盗殺傷罪(刑法240条)が成立する。
実務上の射程
事後強盗が「強盗」概念に含まれることを前提に、強盗殺傷罪の主体に事後強盗犯が含まれることを明示した基本的判例である。答案作成上は、238条を検討して事後強盗の成立を確認した後、240条の適用を導く際の根拠として用いる。殺傷行為が事後強盗の暴行・脅迫そのものである場合はもちろん、その機会に行われた場合も広く含まれる。
事件番号: 昭和22(れ)33 / 裁判年月日: 昭和22年11月25日 / 結論: 棄却
窃盜犯人が逮捕を免れようとして暴行し、よつて一を傷害すれば、その窃盜が未遂に終つたか既遂であるかは問はないで刑法第二三八條第二四〇條前段により強盜傷人罪が成立するのであつて、窃盜が未遂の場合でもこれを、強盜未遂罪及び傷害罪として處断すべきものではない。
事件番号: 昭和31(あ)863 / 裁判年月日: 昭和33年10月31日 / 結論: 棄却
窃盗犯人が現行犯として被害者に逮捕せられ警察官に引き渡されるまでの間に、逮捕状態を脱するため暴行をすることも、刑法第二三八条の「逮捕ヲ免レ」るための暴行にあたる