窃盜犯人が逮捕を免れようとして暴行し、よつて一を傷害すれば、その窃盜が未遂に終つたか既遂であるかは問はないで刑法第二三八條第二四〇條前段により強盜傷人罪が成立するのであつて、窃盜が未遂の場合でもこれを、強盜未遂罪及び傷害罪として處断すべきものではない。
強盜傷人罪の既遂
刑法238條,刑法240條
判旨
窃盗犯人が逮捕を免れる目的で暴行を加え人を負傷させた場合、窃盗が既遂か未遂かを問わず、刑法238条および240条前段により強盗致傷罪が成立する。
問題の所在(論点)
窃盗が未遂に終わった場合であっても、逮捕を免れる目的で暴行を加え人を負傷させたときに、刑法240条(強盗致傷罪)が成立するか。
規範
窃盗犯人が、財物を得ていない(未遂)段階であっても、逮捕を免れる等の目的で暴行・脅迫を行い、よって人を負傷させたときは、刑法238条の事後強盗の規定を介して、同240条前段の強盗傷人罪(強盗致傷罪)が成立する。この場合、基礎となる窃盗行為が既遂であることを要しない。
重要事実
被告人は、窃盗の目的で被害者宅に侵入したが、財物を窃取する前に子供に気づかれ、さらに被害者の妻に足首をつかまれた。被告人は逮捕を免れ逃走するために、持っていた包丁で被害者らに切りつけ、全治約3週間の傷害を負わせた。弁護人は、窃盗が未遂である以上、強盗傷人罪ではなく窃盗未遂罪と傷害罪の併合罪として処断すべきであると主張して上告した。
あてはめ
事後強盗罪(238条)は「窃盗が……逮捕を免れ……るため、暴行又は脅迫をしたとき」に成立するが、同条は窃盗の既遂・未遂を区別していない。また、強盗が人を負傷させた場合に成立する強盗致傷罪(240条)は、強盗の機会における人身被害を重くみる規定である。本件において、被告人は窃盗の目的で侵入し、その機会に逮捕を免れる目的で暴行を加え、被害者を負傷させている。したがって、窃盗の結果(既遂か未遂か)を問わず、事後強盗の要件を満たし、かつ死傷の結果が発生している以上、強盗傷人罪(240条)が適用されるのが相当である。
結論
窃盗未遂であっても、事後強盗の要件を満たし負傷させた以上、強盗傷人罪が成立する。原判決の維持は正当である。
実務上の射程
事後強盗既遂・未遂の区別に関する重要判例。結合犯である240条において、結果(死傷)が発生している限り、手段たる強盗(事後強盗を含む)が未遂であっても既遂として扱われる「既遂時期」の論理を裏付けるものとして答案で活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)249 / 裁判年月日: 昭和23年6月12日 / 結論: 棄却
一 強盗に着手した者がその實行行爲中被害者に暴行を加へて傷害の結果を生ぜしめた以上財物の奪取未遂の場合でも強盗傷人罪の既遂をもつて論すべきである。 二 強盗傷人罪は所謂結果犯であるから強盗共犯者間に被害者に對し傷害を加へるについて意思の連絡がなく又傷害を加へた行爲者に傷害の意思がなくても強盗の實行行爲中共犯者の一人が被…
事件番号: 昭和26(れ)703 / 裁判年月日: 昭和26年7月5日 / 結論: 棄却
強盗傷人罪が成立するには、強盗の機会に傷害の結果を発生せしめるを以て足りるものであつて、必ずしも強盗の手段である暴行又は脅迫により人を傷害し、又は傷害の意思を必要とするものではない。