刑法第二四〇條前段の強盜傷人罪は、強盜犯人が強盜の機會において人を傷害した場合を犯情の重いものとして通常の傷害罪と區別して處斷することとした結果的加重犯であるから、いやしくも傷害の結果が發生した以上、強盜行爲が既遂であると未遂であるとを問わず、同條の既遂罪が成立するのである。されば所論のように窃盜行爲が未遂であるため、刑法第二三八條の準強盜罪の未遂罪に當る場合であつても強盜罪に準ぜられることには變りがないのであるから、もし人を傷害する結果が發生したときには、同法第二四〇條前段の強盜傷人罪の既遂罪として所斷されるべきものであることは當然である。
窃盜未遂の準強盜につき強盜傷人罪既遂の成否
刑法240條,刑法238條
判旨
窃盗が未遂であっても、準強盗(刑法238条)の要件を満たす者が、その機会に人を負傷させた場合には、刑法240条前段の強盗致傷罪の既遂が成立する。
問題の所在(論点)
窃盗が未遂に終わり、刑法238条の準強盗罪として未遂(243条)にあたる場合であっても、傷害の結果が発生していれば刑法240条前段の強盗傷人罪(既遂)が成立するか。
規範
刑法240条前段の強盗傷人罪は、強盗犯人が強盗の機会に人を傷害した場合を、通常の傷害罪と区別して重く処断する趣旨の結果的加重犯である。したがって、傷害の結果が発生した以上、基本となる強盗行為が既遂であるか未遂であるかを問わず、同条の既遂罪が成立する。
重要事実
被告人が窃盗に着手したが、財物の占拠を取得するに至らず窃盗未遂の状態にあった際、準強盗(刑法238条)の構成要件に該当する暴行を行い、その過程で人を傷害するに至った。弁護人は、窃盗が未遂である以上、準強盗も未遂(243条)にとどまり、強盗傷人罪の既遂は成立しないと主張して上告した。
事件番号: 昭和23(れ)1280 / 裁判年月日: 昭和24年1月27日 / 結論: 棄却
一 刑法第二四〇條前段所定の強盜傷人の既遂罪は、強盜の身分を有する者が強盜の實行中又はその機會に傷害の結果を發生せしめる以て直ちに成立するものである、そしてその強盜たる身分は強盜に着手するか又はいわゆる準強盜と認むべき行爲を爲すによりこれを取得するもので、財物を得ると否とは、「窃盜財物を得てその取還を拒ぐ」場合の外その…
あてはめ
本件において、被告人の窃盗行為自体は未遂であった。しかし、準強盗の要件を満たす暴行が行われた以上、被告人は「強盗」の範疇に含まれる。強盗傷人罪は結果的加重犯の性質を有するため、傷害という重い結果が発生した以上、先行する窃盗行為が既遂に達したか否かにかかわらず、240条の構成要件を完全に充足する。したがって、窃盗未遂の事実は強盗傷人罪の既遂成立を妨げない。
結論
窃盗が未遂であっても、強盗の機会に傷害の結果が発生した以上、強盗傷人罪(既遂)が成立する。
実務上の射程
準強盗罪(238条)における「強盗として」の意義を、240条の適用局面においても貫徹した判例である。答案上は、強盗傷人罪における「強盗」には準強盗も含まれること、および240条が既遂・未遂を問わず傷害の結果によって既遂となることを論じる際の根拠として活用する。
事件番号: 昭和40(あ)1868 / 裁判年月日: 昭和40年12月24日 / 結論: 棄却
強盗に着手した者が、被害者に暴行を加えて傷害の結果を生じさせたときは、財産上不法の利益をえることができなかつた場合においても、強盗傷人罪の既遂となるものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和24(れ)1091 / 裁判年月日: 昭和24年7月16日 / 結論: 棄却
上告趣意一の強盜行爲(原判決判示第一の事實)は未遂であることは原判決もそのとおりに認定しているのであるが、その現場において傷人した以上は、たとい強盜行爲は未遂であつても、刑法第二四〇條前段の強盜傷人罪は成立するのである。