判旨
強盗傷人罪(刑法240条前段)の成立には、強盗行為が既遂であることを要せず、未遂であっても負傷の結果が生じれば同罪の既遂が成立する。
問題の所在(論点)
刑法240条前段の強盗傷人罪が成立するために、基本犯である強盗罪(236条)が既遂に達している必要があるか。強盗未遂の段階で負傷の結果が生じた場合の罪責が問題となる。
規範
刑法240条(強盗致死傷罪)は、強盗という機会に人を負傷させたこと自体を重く処罰する趣旨の規定である。したがって、同罪の成否は、財物奪取の成否(強盗の既遂・未遂)に左右されるものではなく、強盗の着手があれば、負傷の結果が発生した時点で強盗傷人罪の既遂が成立する。
重要事実
被告人が強盗を企てて暴行または脅迫を用いたものの、財物を奪取するには至らなかった(強盗未遂)。しかし、その際、被害者に対して負傷の結果を生じさせた。被告人側は、強盗が未遂である以上、強盗傷人罪は成立しない、あるいは刑の減免が認められるべきである旨を主張して上告した。
あてはめ
強盗の実行に着手した者が、その機会に人を負傷させた以上、財物の奪取という目的を達したか否かは同条の既遂成立に影響しない。本件において、被告人が強盗の手段として暴行等を用い、その過程で負傷させた事実に照らせば、強盗行為そのものが未遂であったとしても、強盗傷人罪(240条前段)の既遂が成立すると解するのが相当である。
結論
強盗傷人罪の成立には強盗行為の既遂・未遂を問わない。したがって、強盗未遂であっても負傷の結果が生じれば、強盗傷人罪の既遂が成立する。
実務上の射程
強盗致死傷罪(240条)における「強盗」は、強盗の実行に着手した者を指し、財物奪取の成否を問わないとするのが判例の一貫した立場である。答案上は、強盗未遂罪と傷害罪の観念的競合とする余地はなく、240条の既遂として処理すべき点に注意する。死傷の結果が発生していれば、強盗未遂減軽(243条、43条)の適用も認められない。
事件番号: 昭和40(あ)1868 / 裁判年月日: 昭和40年12月24日 / 結論: 棄却
強盗に着手した者が、被害者に暴行を加えて傷害の結果を生じさせたときは、財産上不法の利益をえることができなかつた場合においても、強盗傷人罪の既遂となるものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和24(れ)1091 / 裁判年月日: 昭和24年7月16日 / 結論: 棄却
上告趣意一の強盜行爲(原判決判示第一の事實)は未遂であることは原判決もそのとおりに認定しているのであるが、その現場において傷人した以上は、たとい強盜行爲は未遂であつても、刑法第二四〇條前段の強盜傷人罪は成立するのである。