判旨
強盗に着手した者が被害者に暴行を加えて傷害の結果を生じさせたときは、財物奪取の目的を遂げなかったとしても、強盗致死傷罪の既遂が成立する。また、共謀に基づき実行行為の一部を分担した者は、自ら直接暴行を加えていない場合でも、共謀共同正犯として同罪の責任を負う。
問題の所在(論点)
強盗に着手した者が財物を奪取できなかったものの、被害者に傷害を負わせた場合、強盗傷人罪の既遂が成立するか。また、共謀に加わり現場に赴きながら直接暴行を加えていない者に同罪の共同正犯が成立するか。
規範
強盗の機会に暴行を用いて被害者に傷害を負わせた場合、強盗傷人罪(刑法240条前段)の成否については、傷害の結果が生じたことをもって既遂と解する。財物の奪取が未遂であっても、人の生命・身体という重大な法益を侵害した以上、既遂罪としての責任を免れない。また、共同正犯の成立には、共謀に基づき犯罪を実行する意思があれば足り、必ずしも実行行為のすべてを分担することを要しない。
重要事実
被告人AおよびCは、被害者B方からビールを強奪しようと共謀して同人方に至った。実行の際、被告人Aは軒先にたたずんで見張り等の役割を果たし、相被告人Cが被害者Bに対して暴行を加え、傷害を負わせた。しかし、最終的に財物の奪取には至らなかった。
あてはめ
被告人らはビール強奪を共謀しており、その実行に際して被害者Bに暴行を加えて傷害を負わせている。強盗傷人罪においては、傷害の結果が発生した時点で既遂と解されるため、財物奪取が未遂であることは既遂の成立を妨げない。また、被告人Aは直接の暴行は行っていないが、共謀に基づいて現場に赴き、役割を果たしている以上、実行行為の分担の有無にかかわらず共犯としての責任を負う。
結論
被告人両名には強盗傷人罪の既遂が成立し、共同正犯としての刑責を負う。本件各上告を棄却する。
実務上の射程
強盗致死傷罪が「強盗」の機会における生命・身体の侵害を重く罰する結合犯であることに鑑み、既遂・未遂の区別は「死傷の結果」を基準とする実務上の中核的な規範である。答案作成においては、240条の既遂時期を論じる際の必須の判例となる。
事件番号: 昭和32(あ)462 / 裁判年月日: 昭和32年6月5日 / 結論: 棄却
強盗に着手した者が、被害者に暴行を加えて傷害の結果を生ぜしめたときは、財物奪取の目的を遂げない場合でも強盗傷人罪の既遂をもつて論ずべきである。