一 所論は畢竟原判決の事實の認定を非難する趣意に歸するからこのような所論は刑訴應急措置法第一三條第二項の規定により、適法な上告の理由ということができない。 二 およそ強盜の共犯者中の一人の施用した財物奪取の手段としての暴行の結果、被害者に傷害を生ぜしめたときは、その共犯者の全員につき強盜傷人罪は成立するのであつて、このことは強盜傷人罪が所謂結果犯たるの故に外ならない。
一 事實認定と刑訴應急措置法第一三條第二項 二 共犯者の一人の加えた傷害と共犯者全員に對する強盜傷人罪の成立
刑訴應急措置法13条2項,刑法60條,刑法240條前段
判旨
強盗の共犯者の1人が、財物奪取の手段として暴行を加え被害者に傷害を負わせた場合、他の共犯者も強盗傷人罪(刑法240条前段)の共同正犯としての責任を負う。本罪は結果的加重犯としての性質を有するため、傷害の結果について共謀がなくても、強盗の共謀がある限り、その結果を帰責させることが可能である。
問題の所在(論点)
結果的加重犯である強盗傷人罪(刑法240条前段)において、暴行による傷害の結果についてまで共謀がなかった場合、他の共犯者に同罪の共同正犯が成立するか。
規範
強盗の共犯者の一人が財物奪取の手段として暴行を施し、その結果被害者に傷害を生ぜしめたときは、その共犯者全員について強盗傷人罪が成立する。これは強盗傷人罪が、基本となる強盗行為から過失なくして生じた結果を処罰する結果的加重犯(結果犯)としての性質を有するからである。
重要事実
被告人Cは、相被告人Aと共謀し、被害者Bからサッカリンを強取しようとした。計画ではCの合図に従い、AがBを襲って樫の棒で殴り、財物を奪うこととされていた。実行時、AはBを樫の棒で殴打して打撲傷を負わせ、財物を強取しようとした。弁護側は、Cには「騙して取る」意思はあったが「殴って傷つける」意思まではなかったと主張し、結果的加重犯である強盗傷人罪について共同正犯は成立しないと争った。
あてはめ
原審が認定した事実によれば、CとAの間には強盗の共同加行の意思があり、役割分担に基づいて犯罪が実行されている。強盗の手段として行われた暴行により傷害が生じた以上、強盗傷人罪が成立する。弁護人は、過失犯に共同正犯が認められないのと同様に、結果的加重犯においても傷害の意思がない者には同罪が成立しないと主張するが、強盗の共謀に基づいて実行された暴行から傷害が生じた以上、共犯者全員がその結果に対して重い責任を負うのが同条の趣旨である。したがって、Cに直接の傷害の意思がなくとも、強盗の共謀がある以上、Aの暴行によって生じた傷害結果についてCも責任を免れない。
結論
被告人Cに強盗傷人罪の共同正犯が成立するとした原判決は正当である。
実務上の射程
結果的加重犯の共同正犯の成否に関するリーディングケースである。基本犯(強盗)について共謀があれば、そこから派生した加重結果(傷害・死亡)についても、直接その結果を意図していなくとも共同正犯として責任を負うという法理を確立した。答案作成上は、強盗致死傷罪を論じる際、実行行為者以外の者に結果を帰責させるための論拠として、本判例の「結果犯(結果的加重犯)としての性質」に言及するのが標準的である。
事件番号: 昭和24(れ)8 / 裁判年月日: 昭和24年6月4日 / 結論: 棄却
刑法第二四〇條前段の強盜傷人罪はいわゆる結果犯であるから、強盜の共犯者の一部の者が暴行したため傷害の結果を發生せしめた場合は強盜を共謀した者の全員が強盜傷人罪の責任を免れないことは屡々當裁判所の判例とするところである。