一 事前に共謀の事實がなくても共犯者がその相手方と意思の連絡の下に犯行に及んだ場合には共同正犯となること。そして被告人が暴行を加えなくても他の共犯者が暴行を爲した事實があれば強盜の共同正犯としての責任を負うことは夫々當裁判所の判例の示すところである。(昭和二三年(れ)第三五一號。同年七月二〇日第三小法廷判決。昭和二二年(れ)第二〇三號、同二三年三月一三日第二小法廷判決) 二 自白はその全部に亘つて補強證據を必要とするものでないことは既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一五三號同二三年六月九日大法廷判決參照)
一 意思の連絡と共同正犯の成立及び共犯者の一部の者のなした暴行と強盜の共同正犯 二 自白の補強證據
刑法60條,刑法236條,憲法38條3項,刑訴應急措置法10條3項
判旨
先行者が窃盗を実行中、後発者が加担して被害者に暴行を加え、両者が意思連絡の下に共同して財物を奪取し傷害を負わせた場合、強盗致死傷罪の共同正犯が成立する。事前に共謀がなくとも、実行の着手後に意思の連絡があれば承継的共同正犯(または現場共謀)として正犯性を肯定できる。
問題の所在(論点)
先行者が窃盗を行っている最中に後発者が加担し、暴行を用いて財物を奪取した場合に、事前共謀がなくても強盗致死傷罪の共同正犯が成立するか。また、自身で暴行を加えていない者も同罪の責任を負うか。
規範
1. 事前に共謀の事実がなくとも、共犯者がその相手方と意思の連絡の下に犯行に及んだ場合には、共同正犯(刑法60条)が成立する。2. 強盗致死傷罪(240条)において、被告人自身が暴行を加えていなくても、他の共犯者が暴行を加えた事実があれば、意思連絡がある限り強盗の共同正犯としての責任を負う。
重要事実
被告人Aが衣類を窃取(窃盗)していたところ、原審相被告人Bがこれに加担した。Bは被害者Cに対して暴行を加え、AとBは協力して衣類を奪取し、その結果Cに傷害を負わせた。A自身が直接暴行を加えた事実は認められないが、Bの暴行に際して両者の間には意思の連絡があったと認定された。
あてはめ
本件において、Aが窃盗を遂行中にBが加担し、両名が協力して財物を奪取したという事実は、その過程で意思の連絡があったことを裏付ける。BがCに対して暴行を加え傷害を負わせた際、AとBとの間には意思連絡の下に犯行を継続する合意(現場共謀)が認められる。したがって、自ら暴行を直接行っていないAであっても、共同正犯の法理に基づき、Bの暴行・傷害の結果について連帯責任を負うものと解される。
結論
被告人に刑法60条、240条を適用し、強盗致傷罪の共同正犯の成立を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
承継的共同正犯および現場共謀の成立を認める際のリーディングケースの一つ。窃盗から強盗への変容過程で加担した者について、意思連絡の存在を根拠に強盗致傷の共同正犯を認める論理として活用できる。答案上は、加担時点での意思連絡と、それ以降の行為・結果への因果的寄与を明示する際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和24(れ)8 / 裁判年月日: 昭和24年6月4日 / 結論: 棄却
刑法第二四〇條前段の強盜傷人罪はいわゆる結果犯であるから、強盜の共犯者の一部の者が暴行したため傷害の結果を發生せしめた場合は強盜を共謀した者の全員が強盜傷人罪の責任を免れないことは屡々當裁判所の判例とするところである。