刑法第二四〇條前段の強盜傷人罪はいわゆる結果犯であるから、強盜の共犯者の一部の者が暴行したため傷害の結果を發生せしめた場合は強盜を共謀した者の全員が強盜傷人罪の責任を免れないことは屡々當裁判所の判例とするところである。
強盜共謀者の一人が加えた傷害と共犯者全員の強盜傷人の責任
刑法60條,刑法240條
判旨
強盗を共謀した者は、実行中の一部共犯者が暴行により傷害を負わせた場合、直接加害行為を行っておらず、かつ傷害の結果を予想していなかったとしても、強盗傷人罪(刑法240条前段)の共同正犯としての責任を負う。
問題の所在(論点)
強盗の共謀に基づき実行に着手した後、一部の共犯者が独断で(あるいは突発的に)傷害の結果を生じさせた場合、その行為を予見していなかった他の共犯者にも強盗傷人罪の共同正犯が成立するか。
規範
刑法240条前段の強盗傷人罪はいわゆる結果的加重犯としての性質を有し、強盗の共犯者の一部が暴行して傷害の結果を発生させた場合には、強盗を共謀した者全員がその責任を負う。共同正犯(刑法60条)が成立するためには、基本となる強盗の共謀があれば足り、致傷の結果について具体的な予見があることまでは要しない。
重要事実
被告人Aは、共犯者B・C・Dらと他人の金品を強奪することを共謀し、被害者E方へ押し入って強盗の実行に着手した。その実行中、A以外の共犯者が被害者Eに対して暴行を加え、傷害の結果を発生させた。A自身は直接の加害行為を行っておらず、当該傷害行為が突如行われたものであったため、その発生を予想していなかった。
あてはめ
本件において、被告人Aは他の共犯者らと金品強奪を目的とする強盗の共謀を行い、現に実行行為に及んでいる。強盗傷人罪は結果犯であるから、強盗の機会に生じた傷害結果については、強盗の共謀が認められる以上、共謀者全員に帰属する。被告人が直接傷害を負わせていない点や、突嗟の行為で予見が困難であったという事実は、強盗の共同正犯としての刑責を否定する理由にはならない。
結論
被告人Aには強盗傷人罪の共同正犯が成立する。
実務上の射程
結果的加重犯(特に強盗致死傷罪)の共同正犯における過失・予見可能性の要否に関するリーディングケースである。答案上は、基本となる強盗罪の共謀があれば、致傷結果についての個別的な共謀や予見がなくても、重い結果について連帯責任を負う根拠として引用する。
事件番号: 昭和24(れ)1768 / 裁判年月日: 昭和24年12月3日 / 結論: 棄却
被告人はAと強盜を共謀してそれを實行したものであることは原判決の認定するところであり、又原判決舉示の證據により十分にこれを認めることができるしからばその強盜共犯者の一人であうAにおいて被害者Bに對し強盜の機會に傷人の結果を與えたものである以上被告人も亦強盜傷人罪の共同正犯としての責を兔がれないことは當然である(昭和二三…
事件番号: 昭和24(れ)293 / 裁判年月日: 昭和24年7月23日 / 結論: 棄却
既に共謀して強盜をした以上、かりに、所論のごとく他の共犯者の暴行の結果たる傷害について被告人に故意、過失がなかつたとしても被告人も、また強盜傷人罪について共同正犯の責を負わなければならないのである。(昭和二三年(れ)第二四九號同年六月一二日第二小法廷判決)