一 被告人が他の被告人と共謀して、他人に對し財物奪取のため暴行を加へ、其結果傷害を生ぜしめた以上は共同して其結果について責に任ずべく、原判決は右の趣旨にそつたもので理由に齟齬ありと言うべきものでない。 二 日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に關する法律第九條に、豫審はこれを行わない旨を規定してあるが、其以前に行われた豫審の訊問調書を證拠とすることが出來ないと云うのではない。すはわち原審の公判調書をみると、原審は同法第一二條の意を體して前記三名の證人を公判期日において訊問する機會を被告人に與へて居るのであるから原審が前記の豫審訊問調書を本件斷罪の證拠としたことに些かの違法もないのである。
一 共犯者の一人の加えた傷害と共犯者全員に對する強盜傷人罪の成立 二 豫審訊問調書の證拠能力
刑法60條,刑法236條,刑法240條,刑訴應急措置法9條,刑訴應急措置法12條1項
判旨
強盗致死傷罪(刑法240条)において、強盗の共謀に基づき暴行が加えられ、その結果として被害者が負傷した場合には、特定の共犯者が直接その負傷の原因となる暴行を分担していなくとも、共犯者全員がその結果について刑事責任を負う。
問題の所在(論点)
強盗の共謀に基づき一連の暴行が行われた際、負傷の原因となった直接の暴行(殴打・蹴打)に直接関与していない共犯者についても、刑法240条(強盗傷人罪)の共同正犯としての責任を問えるか。
規範
被告人が他の被告人と共謀し、財物奪取の目的で他人に対し暴行を加え、その結果として傷害を生ぜしめた以上は、刑法60条の共同正犯の理により、各共犯者はその結果について共同して責任を負うべきである。
重要事実
被告人Cは、共犯者Bらと財物奪取を共謀し、被害者Aを襲撃した。犯行時、BはAの抵抗を排除するために木片で殴打し、腹部を蹴るなどの暴行を加え、Aに小腸穿孔等の重傷を負わせた。一方、CはBによる具体的な殴打や蹴打の時点では直接加担しておらず、その後にBらと協力してAの足を縛り、布団を被せて反抗を抑圧する行為に加わった。Cは、直接の負傷原因となった暴行はBによる単独行為であるとして、自らの傷害についての責任を否定した。
あてはめ
Cは財物奪取という目的のもと、Bらと強盗の共謀をしており、その現場においてAの反抗を抑圧する行為(足を縛る等)を分担している。Bによる殴打や蹴打は、この強盗の目的を達するために行われた暴行の一環であり、全体の共謀の範囲内にある。したがって、Cが直接殴打等を行っていないとしても、強盗という共同実行の過程で生じた負傷の結果については、共謀共同正犯の理に基づき、Cも共同してその責任を負うと解される。
結論
Cには刑法60条、240条前段が適用され、強盗傷人罪の共同正犯としての罪責が認められる。
実務上の射程
強盗致死傷罪における結果的加重犯的側面の共同正犯の成立を認めた。共謀の範囲内で、強盗の手段たる暴行から致死傷の結果が発生したならば、特定の実行行為の分担の有無にかかわらず全体について責任を負うという、司法試験における強盗罪の重要規範である。
事件番号: 昭和24(れ)8 / 裁判年月日: 昭和24年6月4日 / 結論: 棄却
刑法第二四〇條前段の強盜傷人罪はいわゆる結果犯であるから、強盜の共犯者の一部の者が暴行したため傷害の結果を發生せしめた場合は強盜を共謀した者の全員が強盜傷人罪の責任を免れないことは屡々當裁判所の判例とするところである。