現行刑法において住居侵入罪と窃盗罪とはその被害法益及び犯罪の構成要件を異にし、住居侵入の行為は窃盗罪の要素に属せず、別個独立の行為であり、しかも通常、右両罪の間には手段結果の関係があることが認められるから、第一審判決が両罪を刑法五四条一項後段のいわゆる牽連犯として取扱つたのは正当である。
住居侵入罪と窃盗罪との関係
刑法57条1項後段,刑法130条,刑法235条
判旨
住居侵入罪と窃盗罪は、被害法益及び構成要件を異にする別個独立の犯罪であるが、通常は手段と結果の関係にあるため、刑法54条1項後段の牽連犯となる。
問題の所在(論点)
住居侵入罪と窃盗罪が併合罪(刑法45条)となるか、あるいは牽連犯(刑法54条1項後段)となるか。すなわち、住居侵入という行為が窃盗の「手段」として認められるか。
規範
刑法54条1項後段の「犯罪の手段又は結果である行為」とは、ある犯罪が他方の犯罪の手段または結果として行われる関係(牽連関係)にある場合を指す。住居侵入罪と窃盗罪は、その被害法益および構成要件が異なる別個独立の行為であるが、通常は前者が後者の手段となる関係が認められる。
重要事実
被告人が他人の住居に侵入し、その後に窃盗に及んだ。第一審は、住居侵入罪と窃盗罪の成立を認めた上で、両罪を刑法54条1項後段に基づき、いわゆる牽連犯として処断した。これに対し、弁護側が両罪の罪数関係を争い上告した。
事件番号: 昭和24(れ)2949 / 裁判年月日: 昭和25年5月4日 / 結論: 破棄自判
最高裁判所が破棄自判するに當り被告人は犯時及び原審判決當時には少年であつたが今や滿十八歳以上となつたものであるから、少年法を適用しないで處斷刑期並びに原判決の言渡した不定期刑(二年六月以上五年以下)の範圍内で被告人を懲役三年六月に處し、第一審における未決勾留日數中八〇日を刑法二一條に則り本刑に算入すべきものとする。
あてはめ
住居侵入罪は住居の平穏を害する罪であり、窃盗罪は財産権を害する罪であって、構成要件は重ならない。しかし、窃盗を行うに際しては、その実行を容易にするために他人の住居に侵入することが通常行われる。本件においても、住居侵入の行為は窃盗罪の要素そのものではないものの、窃盗を完遂するための手段としての性質を有しているといえる。
結論
住居侵入罪と窃盗罪は、手段と結果の関係にあるため、刑法54条1項後段の牽連犯として一罪として処断される。
実務上の射程
住居侵入罪が関わる財産犯(窃盗、強盗、詐欺等)の罪数決定におけるリーディングケースである。答案上は、両罪が別罪として成立することを前提に、住居侵入が当該財産犯の手段として通常行われるものであることを指摘して牽連犯とする。ただし、住居侵入後に突如窃盗を思い立った場合など、手段・結果の関係が否定される例外的な事情の有無には注意を要する。
事件番号: 昭和43(あ)829 / 裁判年月日: 昭和43年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】住居侵入罪と器物毀棄罪は、手段と結果の関係にあるといえる場合には刑法54条1項後段の牽連犯となる。本判決は、両罪が併合罪であるとの主張を被告人に不利益な主張として排斥し、牽連犯の関係を肯定した原判決を維持した。 第1 事案の概要:被告人が住居に侵入し、その際に器物毀棄を行った。第一審または控訴審に…
事件番号: 昭和55(あ)487 / 裁判年月日: 昭和57年3月16日 / 結論: 破棄自判
他人の住居の庭先に侵入してその住居内をひそかにのぞき見た場合における住居侵入罪と軽犯罪法一条二三号の罪とは、牽連犯の関係にある。