一 同一被告人に對し同時に繋屬した數個の被告事件を各別に審判するか又は併合して審判するかは、審理の便宜上裁判所が自由に決し得る職權に屬することであつて、必ずしも併合して審判することを要するものでないこと屡々判例の示す通りである。 二 住居侵入罪と強盜罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件を異にし、住居侵入の行爲は強盜罪の要素に屬せず別個獨立の行爲であり、しかも通常右兩罪の間には手段結果の關係のあることが認められるから、原判決が右兩罪を刑法第五四條第一項後段の所謂牽連犯として擬律しているのは正當である。 三 銃砲等所持禁止令違反罪は銃砲等の不法所持自體によつて成立し、その犯罪構成要件も被害法益も強盜罪とは異なるのみならず、銃砲等の不法所持は強盜罪の要素に屬するものではない。それ故に被告人が日本刀を所持したのは時間的には強盗行爲の間だけであつたとしても、強盜罪の中に銃砲等所持禁止令違反罪が吸收せられて、強盜罪の外に別罪が成立するのではないという所論は採用できない。 四 假りに第一審の裁判に關して違法があつたとしても、本件上告は第二審に對するものであるから、そのことは適法な上告理由とならない。論旨は、第一審の違法を見逃した原審判決は違法であると主張しているけれども、第二審は第一審とは別個の覆審であるから、第二審が第一審の瑕疵を不問にしたとしても、これを違法とする理由とはならない。
一 併合審判と裁判所の自由裁量 二 住居侵入罪と強盜罪との牽連關係 三 銃砲等所持禁止令違反罪と強盜罪との關係 四 第一審判決の違法と第二審判決に對する上告理由
旧刑訴法348條,刑法130條,刑法236條,刑法54條1項,刑法第236條,銃砲等所持禁止令1條2條,刑訴法408條,刑訴法409條
判旨
住居侵入罪と強盗罪は、被害法益及び構成要件を異にする別個独立の犯罪であるが、通常は手段と結果の関係にあるため牽連犯となる。また、日本刀の不法所持は強盗罪の要素に含まれないため、強盗の際のみ所持していたとしても銃砲等所持禁止令違反罪が別個に成立する。
問題の所在(論点)
1. 住居侵入行為が強盗罪の一部として吸収されるか、あるいは別個に罪を構成し牽連犯となるか。 2. 犯行時のみ凶器(日本刀)を不法所持していた場合、その所持罪が強盗罪に吸収されるか、あるいは別個に罪を構成するか。
規範
1. 住居侵入罪と強盗罪の関係について:両罪は被害法益及び犯罪構成要件を異にし、住居侵入は強盗罪の要素に属さない別個独立の行為であるが、通常は手段と結果の関係にあるため、刑法54条1項後段の牽連犯となる。 2. 銃砲等所持禁止令違反罪と強盗罪の関係について:銃砲等の不法所持はそれ自体で成立し、強盗罪の構成要件や法益とも異なる。銃砲等の所持は強盗罪の要素に含まれないため、吸収関係には立たず、併合罪(または牽連犯)として別個に成立する。
事件番号: 昭和24(れ)2907 / 裁判年月日: 昭和25年2月28日 / 結論: 棄却
住居侵入罪と強盜致死罪竝に強盜傷人罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件をそれぞれ異にし、住居侵入の行爲は強盜致死及び強盜傷人罪の要素に屬せず別個獨立の行爲であるから、前者が後者に處罰上吸收せられると做す所論は理由がない。しかも右の兩者の間には通常手段結果の關係のあることが認められるから、原判決が判示住居侵入と強盜致死…
重要事実
被告人は、日本刀を所持して他人の住居に侵入し、強盗に及んだ。被告人側は、住居侵入から退去までの一連の行為は一個の脅迫行為として不可分であり強盗罪に包含されるべきであること、また、日本刀の所持は強盗の犯行時間中のみであったことから強盗罪に吸収されるべきであることを主張して上告した。
あてはめ
1. 住居侵入と強盗について:住居侵入は、住居の平穏を害するものであり、強盗罪(財産権及び身体・自由)とは法益が異なる。また、強盗の構成要件に住居侵入は含まれていない。本件においても、住居侵入は強盗の手段として行われた独立の行為であると評価できるため、牽連犯とするのが相当である。 2. 銃砲等所持について:日本刀の所持は、それ自体が銃砲等所持禁止令(当時)に抵触する。たとえ所持が強盗の実行時間中のみであっても、所持行為自体が強盗の要件(暴行・脅迫)そのものとはいえない。したがって、強盗罪の中に吸収されることはなく、別罪が成立すると解すべきである。
結論
住居侵入罪と強盗罪は牽連犯となり、銃砲等所持禁止令違反罪は強盗罪とは別に独立して成立する。原判決の罪数判断は正当である。
実務上の射程
強盗致死傷罪等の重大犯罪においても、住居侵入罪との関係は牽連犯(科刑上一罪)として処理するのが実務の通説的見解であり、本判決はその基礎となる判断を示している。また、凶器の不法所持(銃刀法違反)が手段として行われた場合も、吸収されることなく別罪を構成するという罪数判断の基準として機能する。
事件番号: 昭和24(れ)2361 / 裁判年月日: 昭和24年11月22日 / 結論: 棄却
現行刑法においても、住居侵入罪と強盜罪とはその被害法益および犯罪の構成要件を異にし、住居侵入の行爲は強盜罪の要素に屬せず別個獨立の行爲であり、しかも通常右兩罪の間には手段結果の關係のあることが認められるから、原判決が右兩罪を刑法第五四條第一項後段のいわゆる牽連犯として取扱つたのは正當であつて、論旨は理由がない。(昭和二…
事件番号: 昭和24(れ)2949 / 裁判年月日: 昭和25年5月4日 / 結論: 破棄自判
最高裁判所が破棄自判するに當り被告人は犯時及び原審判決當時には少年であつたが今や滿十八歳以上となつたものであるから、少年法を適用しないで處斷刑期並びに原判決の言渡した不定期刑(二年六月以上五年以下)の範圍内で被告人を懲役三年六月に處し、第一審における未決勾留日數中八〇日を刑法二一條に則り本刑に算入すべきものとする。
事件番号: 昭和23(れ)913 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 棄却
被告人等を少年法による保護處分その他實刑を科せざる處分を受けしめるのが相當であるか否か等はすべて事實審たる原裁判所の裁量權にのみ屬するところである。
事件番号: 昭和24(れ)3096 / 裁判年月日: 昭和25年5月2日 / 結論: 棄却
被告人らの刀劍所持は強盜の犯行の前後にわたるものであつて、強盜の手段として所持したのではなく、かつ刀劍の所持と強盜行爲との間に通常手段結果の關係があるというわけではないのであるから、原審が本件に刑法第五四條を適用せずして第四五條を適用したのは適法である。