一 刑訴應急措置法施行後においては、舊刑訴法第四一二條乃至第四一四條に規定する事由は、上告審において職權で調査することは許されない。 二 住居侵入罪と強盜罪とは、おのおのその被害法益とその犯罪構成要件とを異にしているのであつて、強盜罪は當に當然住居侵入を伴うものではなく、ただ兩者は通常手段結果の關係があるに過ぎない。されば原判決が被告人の住居侵入と強盜の所爲を刑法第五四條第一項後段にいわゆる牽連犯として擬律したのは正當である。論旨は「強盜犯等の防止及び處分に關する法律」第二條第三號の規定を引用して縷述するのであるが、同條同號の罪はいわゆる結合犯であつてこれに對する刑は刑法の強盜の罪に對する刑よりも重いのであることに鑑みても、論旨のあたらないことは明らかなところである。 三 舊刑訴法第三六〇條第二項にいわゆる「法律上犯罪の成立を阻却すべき原由………たる事實上の主張」とは、犯罪構成に關しない事實で、しかも、その事實の存在が法律上當然に犯罪の成立を阻却すべきものにつきての主張を意味するのであつて、犯罪構成要件に屬する事實そのものについての否認は、これに該當しないのである。しかるに所論被告人等の主張は強姦罪の構成要件である暴行脅迫による姦淫の事實を否認する主張であるから、原判決が特に右主張に對する判斷を明示しなかつたとしても所論刑訴の條項に違反するとはいえない。しかも原審は所論被告人等の右主張を排斥して被告人等の所爲を強姦と認定しているのであるから、原判決には所論のやうな判斷遺脱の違法は存しない。 四 見張は犯罪を遂行するためその犯行の發覺、犯人の逮捕その他犯行に對する障害を排除することを擔當する所爲であるから、必ずしも常に犯行現場を見通しうる場所でなければできないとする實驗則は存しない。
一 舊刑訴法第四一二條乃至第四一四條所定の事由は上告審において職權で調査することを得るか 二 住居侵入罪は強盜罪に吸收されるか 三 強姦罪において暴行脅迫による姦淫の事實を否認する主張と「法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事實上の主張」の意義 四 見張は犯行現場を見通し得る場所でなければできないか
刑訴應急措置法13條2項,舊刑訴法434條3項,舊刑訴法360條2項,刑法130條,刑法236條,刑法54條1項,刑法177條,刑法60條
判旨
住居侵入罪と強盗罪は被害法益及び構成要件を異にするため、両罪が手段・結果の関係にある場合は刑法54条1項後段の牽連犯となる。また、見張り役は犯行の障害排除を担当するものであるから、必ずしも現場を直接見通せる場所にいる必要はない。
問題の所在(論点)
1. 住居侵入罪と強盗罪の罪数関係(牽連犯の成否)。 2. 現場を直接視認できない場所での「見張り」行為が共同正犯の実行分担として認められるか。 3. 構成要件該当性に関する否認の主張に対し、裁判所は判決で個別に判断を示す義務を負うか(理由不備の有無)。
事件番号: 昭和24(れ)2949 / 裁判年月日: 昭和25年5月4日 / 結論: 破棄自判
最高裁判所が破棄自判するに當り被告人は犯時及び原審判決當時には少年であつたが今や滿十八歳以上となつたものであるから、少年法を適用しないで處斷刑期並びに原判決の言渡した不定期刑(二年六月以上五年以下)の範圍内で被告人を懲役三年六月に處し、第一審における未決勾留日數中八〇日を刑法二一條に則り本刑に算入すべきものとする。
規範
1. 罪数:住居侵入罪と強盗罪は被害法益及び構成要件を異にし、前者が当然に後者に包含される関係にはない。したがって、両者が通常手段と結果の関係にあるときは牽連犯(刑法54条1項後段)となる。 2. 共同正犯(見張り):見張りは、犯罪遂行のため犯行の発覚や逮捕等の障害を排除することを分担する行為である。必ずしも犯行現場を直接見通しうる場所にいることを要しない。 3. 判断遺脱:旧刑訴法360条2項(現335条2項)の「法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実」とは、構成要件に該当しない事実ではなく、違法性阻却事由や責任阻却事由等の存在を指す。構成要件に属する事実の否認については、特段の判断を明示する必要はない。
重要事実
被告人Aは、共犯者らと共謀して強盗を計画し、犯行現場付近において見張り役を担当した。被告人らは被害者宅に侵入して強盗を行い、さらに被告人B及びCは強姦に及んだ。原審は、Aの見張り行為を肯定し、住居侵入と強盗について牽連犯として処断した。また、被告人らが強姦の暴行・脅迫を否認したのに対し、原審は証拠に基づき強姦罪の成立を認めたが、否認の主張そのものに対する直接の判断は判決文に明示しなかった。
あてはめ
1. 住居侵入と強盗は別個の構成要件であり、前者は後者の不可欠な要素ではない。本件では住居侵入が強盗の手段として行われており、刑法54条1項後段を適用した原審の判断は正当である。 2. 見張りは犯行の円滑な遂行を確保する役割であり、現場の視認可能性は必須ではない。したがって、見張り事実の認定に経験則違反はない。 3. 被告人らの強姦に関する主張は構成要件(暴行・脅迫)の否認にすぎず、犯罪成立を阻却する別個の事実(正当防衛等)の主張ではない。原審が強姦罪の成立を認めた以上、否認主張を排斥したことは明白であり、判断遺脱の違法はない。
結論
1. 住居侵入罪と強盗罪は牽連犯となる。 2. 現場が見えなくとも、障害排除を分担すれば見張りとして共同正犯が成立しうる。 3. 構成要件の否認に対する個別の判断明示は不要である。本件各上告を棄却する。
実務上の射程
住居侵入と強盗(または窃盗)の罪数関係について牽連犯とする実務の標準的見解を示す。また、共同正犯における見張りの役割を「障害の排除」と定義し、場所的近接性の緩和を認める際の論拠となる。判決書に記載すべき「理由」の範囲(構成要件の否認は335条2項の対象外)を確認する際にも活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)2907 / 裁判年月日: 昭和25年2月28日 / 結論: 棄却
住居侵入罪と強盜致死罪竝に強盜傷人罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件をそれぞれ異にし、住居侵入の行爲は強盜致死及び強盜傷人罪の要素に屬せず別個獨立の行爲であるから、前者が後者に處罰上吸收せられると做す所論は理由がない。しかも右の兩者の間には通常手段結果の關係のあることが認められるから、原判決が判示住居侵入と強盜致死…
事件番号: 昭和24(れ)2466 / 裁判年月日: 昭和25年2月16日 / 結論: 棄却
強盜の共謀をした者は他の共謀者の暴行脅迫強取等の實行行爲を通じて自己の犯意が實行に移された以上は、たとい、自分は直接強盜の實行行爲をしなくとも強盜の共同正犯たる罪責を免れえないものであるから共謀者の一人である被告人が判示のごとく見張行爲をした以上判示他の共謀者の脅迫、強奪行爲に對しその責を負うべきものである。されば、原…