一 刑法第二四〇条後段の罪は、強盗犯人が故意に人を死に致した場合及び傷害に因り人を死に致した場合の両者を包含するものであつて、強盗罪と殺人罪との結合罪又は強盗罪と傷害致死罪との結合罪にほかならず、従つて、強盗殺人罪についてはただ刑法第二四〇条後段のみを適用すれば足ること、つとに大審院判例の示すところであつて、今なお、これを変更するの要を認めない。 二 註。大審院判例大正一一年(れ)第一二五三号同年一二月二二判決刑集一巻八一五頁昭和八年(れ)第一四六一号同年一一月三〇日判決刑集一二巻二一七七頁
強盗殺人行為に対する擬律
刑法240条,刑法199条
判旨
刑法240条後段の強盗殺人罪は、強盗が故意に人を死亡させた場合と、傷害により死に至らしめた場合の両方を包含する結合罪である。したがって、殺意がある場合であっても、同条後段のみを適用すれば足り、殺人罪を別途成立させる必要はない。
問題の所在(論点)
強盗が殺意をもって人を死に致した場合に、刑法240条後段(強盗致死罪・強盗殺人罪)を適用できるか。また、殺人罪(199条)を別途適用、あるいは併合罪とする必要があるか。
規範
刑法240条後段の罪は、強盗犯人が故意に人を死に致した場合(殺意がある場合)および傷害により人を死に致した場合(殺意がない場合)の両者を包含する。これは強盗罪と殺人罪、または強盗罪と傷害致死罪との結合罪としての性質を有するものである。
重要事実
被告人が強盗の際、被害者に対して殺意をもって暴行を加え、死に至らしめた事案。弁護人は、殺意がある場合に刑法240条(強盗殺人罪)を適用することの憲法違反や法令違反を主張し、上告した。
あてはめ
刑法240条後段は、強盗という機会に人の生命を奪うという高度の危険性に鑑み、結果のいかんを問わず重く処罰する規定である。同条には「死に至らしめた」とあり、文言上、過失(傷害致死)のみならず故意(殺人)による場合を排除していない。大審院以来の判例を維持し、強盗が故意に人を殺害した場合は同条に含まれる結合罪と解されるため、殺人罪を別途問うまでもなく同条後段のみを適用することで足りる。
結論
強盗犯人が殺意をもって人を死に致した場合も、刑法240条後段の強盗殺人罪が成立する。
実務上の射程
強盗致死傷罪における「死に致した」に殺意が含まれることを明示した重要判例。答案上、強盗殺人罪の成立を検討する際には、本判例を根拠に「殺意がある場合も240条後段に含まれる」と一言断れば足り、殺人罪との観念的競合などを検討する必要はない。
事件番号: 昭和26(あ)2474 / 裁判年月日: 昭和26年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人罪(刑法240条後段)の成立には、強盗の機会に殺意をもって人を死亡させた場合も含まれ、当初から殺害して金品を強取する意思で犯行に及んだ場合であっても同罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、以前から自分を馬鹿にしてきたAに対し、自殺する前にAを殺害して道連れにし、そのついでにA方から金…
事件番号: 昭和40(あ)2002 / 裁判年月日: 昭和40年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗の機会に殺意をもって人を死傷させた場合であっても、刑法240条(強盗致死傷罪)のみが成立し、同条と殺人罪等との観念的競合とはならない。また、強盗が強姦のうえ殺意をもって人を死亡させた場合も、刑法241条後段(強盗強姦殺人罪)が成立し、殺人罪等を包含する。 第1 事案の概要:被告人が、強盗の際に…
事件番号: 昭和24(れ)1012 / 裁判年月日: 昭和24年7月14日 / 結論: 棄却
刑法第二四〇條後段は「強盜人ヲ死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役ニ虞ス」と規定して殺意の有無を問はず強盜犯人が暴行の結果人を死に致せば強盜殺人罪の成立することを明らかにしているのである。それは暴行脅迫によつて他人の財物を強奪する強盜というやうな危險極まる兇悪な犯罪を敢てするものが、その暴行によつて人を死亡せしめるなら、…