判旨
強盗の機会に殺意をもって人を死傷させた場合であっても、刑法240条(強盗致死傷罪)のみが成立し、同条と殺人罪等との観念的競合とはならない。また、強盗が強姦のうえ殺意をもって人を死亡させた場合も、刑法241条後段(強盗強姦殺人罪)が成立し、殺人罪等を包含する。
問題の所在(論点)
強盗が殺意をもって人を死傷させた場合に、強盗致死傷罪等のほかに殺人罪(または同未遂罪)が成立し、両者が観念的競合の関係に立つのか、それとも強盗致死傷罪等の一罪のみが成立するのか。
規範
強盗の機会に殺意をもって人を死傷させた場合、強盗致死傷罪(刑法240条)の一罪が成立する。また、強盗が強姦し、かつ殺意をもって死に至らしめた場合も、強盗強姦殺人罪(旧刑法241条後段、現241条3項)の一罪として処断され、殺人罪等との観念的競合を認めるべきではない。
重要事実
被告人が、強盗の際に殺意をもって被害者を死傷させた(判示第1、第2、第5の所為)、および強盗の際に婦女を強姦した上、殺意をもって死に至らしめた(判示第3の事実)事案。弁護人は、大審院判例に基づき、殺人罪等との観念的競合を認めるべきであり、刑法240条や241条の単独適用とした原判決は判例違反であると主張して上告した。
あてはめ
本判決は、殺意がある場合でも強盗致死傷罪等の一罪のみが成立するという解釈を維持した。最高裁は、強盗の機会における殺意ある死傷行為について、強盗致死傷罪と殺人罪等の観念的競合を認めていた大審院判例(大正3年、昭和3年)を引用する上告趣意に対し、既にそれとは異なる判断を示した最高裁判決(昭和32年等)が存在することを指摘した。これにより、殺意の有無にかかわらず結果として死傷が生じれば強盗致死傷罪等の一罪として包括的に評価されるべきであるとの判断を是認した。
結論
強盗が殺意をもって人を死傷させた場合、刑法240条(または241条)のみが成立し、殺人罪との観念的競合にはならない。
実務上の射程
結合犯としての性質を持つ強盗致死傷罪(240条)および強盗強姦殺人罪(241条3項)について、殺意の有無が罪数に影響しないことを確認した。答案上は、殺意がある事例でも別途殺人罪を成立させる必要はなく、同条項のみを適用すれば足りる。
事件番号: 昭和42(あ)1375 / 裁判年月日: 昭和43年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許されるのは、犯行の動機、態様、結果、社会的影響、被告人の態度等の諸般の情状を照らし、極刑を科すことがやむを得ないと認められる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯罪行為(詳細は判決文からは不明)を行い、第一審および控訴審において極刑(死刑)の判決を受けた。被告人側は事実…
事件番号: 昭和24(れ)562 / 裁判年月日: 昭和24年5月28日 / 結論: 棄却
一 被告人を所論強盜罪の共同正犯に問擬したことは明白であるから、原判決が當該事實に對する擬律において刑法第二三六條と同時に同第六〇條を適用したことは明らかである。ただ後者を併せて掲記することを遺脱したに過ぎない。このように判決書に刑法總則の法條を遺脱しても判文全體よりその遺脱が明白な場合は所論のように擬律錯誤の違法あり…
事件番号: 昭和32(あ)3259 / 裁判年月日: 昭和33年6月24日 / 結論: 棄却
婦女を強姦した上所持品を強取しようと決意し、まずその前頸部を扼して失神させ被害者の自転車を隠す等の行為に出で、強姦の点は未遂に終つた後即時犯行の発覚をおそれて殺意を生じ殺害した場合は、刑法第二四〇条後段、第二四一条前段、第二四三条、第五四条第一項前段を適用すべきものである
事件番号: 昭和24(れ)2907 / 裁判年月日: 昭和25年2月28日 / 結論: 棄却
住居侵入罪と強盜致死罪竝に強盜傷人罪とは、その被害法益及び犯罪の構成要件をそれぞれ異にし、住居侵入の行爲は強盜致死及び強盜傷人罪の要素に屬せず別個獨立の行爲であるから、前者が後者に處罰上吸收せられると做す所論は理由がない。しかも右の兩者の間には通常手段結果の關係のあることが認められるから、原判決が判示住居侵入と強盜致死…