しかし原審の認定したクロールエチールの買入A、B、C、等を仲間に引入れた事實、日本刀の入手等によつて既に豫備としては既遂になつて居るのである。従つて其以後の行為を中止したからといつて未遂にならない。原審が中止未遂の法條を適用しなかつたのは當然である。なほ原審公判調書を見ても辯護人が所論のような主張をした形跡はないから、原判決に舊刑事訴訟法第三六〇條第二項違反はない。
強盜の豫備をなし其の以後の行爲を中止した者の責任
刑法237條,刑法43條
判旨
予備罪の構成要件に該当する行為が既遂に達した後に実行の着手以前の段階で行為を中止しても、中止未遂(刑法43条但書)の規定を適用することはできない。
問題の所在(論点)
強盗予備罪等の予備罪が成立した後に実行の着手前の段階で行止まった場合、刑法43条但書の中止未遂の規定を適用、ないし準用することができるか。
規範
刑法43条但書の規定する中止未遂は、犯罪の実行に着手した後、これを自己の意思により中止した場合に適用されるものである。したがって、予備罪の構成要件に該当する行為を行い、予備罪として既に既遂に達している場合には、その後の行為を任意に中止したとしても、中止未遂の規定を適用する余地はない。
重要事実
被告人は、強盗等を目的として、クロールエチールの買入れ、共犯者の勧誘、および日本刀の入手等の行為を行った。その後、実行の着手に至る前の段階で行跡を中止した。弁護人は、この中止行為について中止未遂の規定を適用すべきであり、これに判断を示さなかった原判決には判断遺脱の違法があると主張して上告した。
あてはめ
被告人が行ったクロールエチールの買入れ、仲間の引き入れ、日本刀の入手という各事実は、強盗等の予備行為として既に完結しており、予備罪としては既遂に達している。中止未遂は「実行に着手」した後の概念であり、予備罪が既遂となった後にその後の進行を止めたとしても、既に成立した予備罪を中止未遂として減免することはできない。したがって、原審が中止未遂の規定を適用しなかった判断は正当である。
結論
予備罪の既遂後に任意に中止しても中止未遂は成立せず、刑を減免することはできない。上告棄却。
実務上の射程
予備罪の中止について、中止未遂の規定を直接適用または準用することを否定した重要判例である。答案上は、予備の段階で任意に中止した場合の処理として、①本判決を根拠に否定する立場、または②政策的見地から43条但書を準用する立場(通説的見解)の対立を意識して記述する際に用いる。本判決の立場によれば、予備罪成立後の任意中止は情状として考慮されるにとどまる。
事件番号: 昭和23(れ)1706 / 裁判年月日: 昭和24年3月3日 / 結論: 棄却
一 記録によれば、被告人は、警察署、検事局、第一審公判廷、原審公判廷において、終始一貫して通譯を介するところなく、日本語を聞取り且つ日本語を話していることは明らかであつて、これらの點より見れば、原審は、被告人が公判請求書の記載を讀み聞かされ、これを理解する十分な日本語の知識あることを職權をもつて認定し審理をなしたことは…