A辯護人に對しては、公判期日の通知が適式になされたにもかゝわらず、同辯護人は同公判期日に出頭しなかつたものであつて、その不出頭が正當の理由に基ずくものであることは、これを認めるに足る何等の證跡がないから同辯護人は自ら期日を懈怠したものというべく、かゝる場合には假令所謂必要的辯護事件であつても、他の相辯護人が出頭し之に辯護の機會が與えられた以上裁判所は不出頭の辯論を抛棄する旨の被告人の明らかな意思表示を待つことなしに、この不出頭の辯護人の辯論を聽かないで辯論を終結しても、之をもつて不法に辯護權の行使を制限したものと称するを得ない。(昭和二四年(れ)第一四七四號、同年八月九日第三小法廷判決、昭和二三年(れ)第一九四四號、同二四年一二月二一日大法廷判決參照)。
必要的辯護事件につき相辯護人が出頭し、期日を懈怠した辯護人の辯論を聞かないで審理を終結した場合と辯護權の不法制限の有無
舊刑訴法320條1項2項,舊刑訴法410條11號,舊刑訴法334條1項
判旨
必要的弁護事件において、適式な通知を受けた弁護人の一人が正当な理由なく欠席した場合、他の相弁護人が出頭して弁護の機会が与えられていれば、裁判所は欠席した弁護人の弁論を聴かずに弁論を終結させることができる。
問題の所在(論点)
複数の弁護人が選任されている必要的弁護事件において、一部の弁護人が正当な理由なく欠席した場合、他の相弁護人が出頭していれば、欠席した弁護人の弁論を聴かずに弁論を終結させることは許されるか(旧刑訴法下の判断であるが、現行刑訴法289条1項・290条の趣旨に関わる論点)。
規範
必要的弁護事件であっても、適式な通知を受けた弁護人が正当な理由なく公判期日に出頭せず自ら期日を懈怠した場合には、他の相弁護人が出頭して弁護の機会が与えられている限り、裁判所は被告人による弁論放棄の明らかな意思表示を待たずして、当該欠席弁護人の弁論を聴かずに弁論を終結させることができる。これは不当な弁護権の制限には当たらない。
重要事実
被告人4名に対し必要的弁護事件として複数の弁護人が選任されていた。そのうちの一人であるA弁護人に対し、適式に公判期日の通知がなされたが、同弁護人は正当な理由なく当該期日に出頭しなかった。一方で、他の相弁護人は同公判期日に出頭しており、弁護の機会が確保されていた。原審は、欠席したA弁護人の弁論を聴かないまま弁論を終結させたため、被告人側が弁護権の行使を制限されたとして上告した。
あてはめ
本件では、A弁護人に対し適式に期日通知が行われていたにもかかわらず、正当な理由なく欠席しており、弁護人が自ら期日を懈怠したものと評価できる。また、本件には複数の弁護人が選任されており、他の相弁護人が期日に出頭して弁護の機会を与えられていた。このような状況下では、実質的な弁護権の行使は保障されており、裁判所がわざわざ被告人の明示的な弁論放棄の意思を確認せずとも、手続きを進行させることが認められる。したがって、弁論を終結させた措置に違法はない。
結論
一部の弁護人が正当な理由なく欠席しても、他の相弁護人が出頭して弁護の機会が与えられていれば、そのまま弁論を終結させても弁護権の不当な制限にはならない。
実務上の射程
複数の弁護人がいる場合の必要的弁護の充足性を判断する際の射程となる。現行法下でも、一人の弁護人が出頭していれば開廷自体は可能(刑訴法289条参照)であるが、最終的な弁論(最終弁論)の機会を欠席した弁護人に重ねて与える必要があるかという局面で、本判例のロジックが援用され得る。
事件番号: 昭和23(れ)1681 / 裁判年月日: 昭和24年3月26日 / 結論: 棄却
一 適法な召喚状の送達を受けながら、辯護人がその期日に公判に出頭しなかつた場合、その公判において、裁判所が次回期日を指定し訴訟關係人に出頭を命じた以上、その出頭命令は、右期日を懈怠した辯護人に對しても、その効力を及ぼすものであつて、右辯護人に對し、さらに召喚の手續を採る必要はないものと解しなければならない。 二 原審が…
事件番号: 昭和26(れ)1140 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
所論田沼弁護人は適法な呼出を受けながら故なく原審第二回公判期日に出頭しなかつたことは記録上明らかであつて(同弁護人提出の延期願は、他の被告人に関するものであつて、被告人Aの公判に関するものではない)かかる場合、右公判において被告人が同弁護人の弁論を抛棄した以上、裁判所は同弁護人の弁論を聞かないで結審しても、これを以て所…