所論田沼弁護人は適法な呼出を受けながら故なく原審第二回公判期日に出頭しなかつたことは記録上明らかであつて(同弁護人提出の延期願は、他の被告人に関するものであつて、被告人Aの公判に関するものではない)かかる場合、右公判において被告人が同弁護人の弁論を抛棄した以上、裁判所は同弁護人の弁論を聞かないで結審しても、これを以て所論のごとき違法ありとすることのできないことは、当裁判所判例の趣旨に徴して明らかである。(昭和二三年(れ)第一九四四号、同二四年一二月二一日大法廷判決参照)
弁護人の弁論の行使を不法に制限したことにならない事例
旧刑訴法320条,旧刑訴法410条11号
判旨
弁護人が適法な呼出を受けながら正当な理由なく公判期日に出頭しない場合、被告人が弁論を放棄した以上、弁護人の弁論を経ずに結審しても違法ではない。
問題の所在(論点)
弁護人が公判期日に欠席した場合において、弁護人の弁論を経ずに結審することが、審理の適正や弁護を受ける権利の観点から許されるか。特に被告人が弁論を放棄した場合の是非が問題となる。
規範
弁護人が適法な呼出を受けながら正当な理由なく公判期日に出頭せず、かつ被告人が当該弁護人の弁論を放棄する意思を表示した場合には、裁判所は弁護人の弁論を聴取することなく審理を終結(結審)させることができる。
重要事実
被告人の弁護人は適法な呼出を受けていたが、正当な理由なく原審の第2回公判期日に出頭しなかった。弁護人が提出した延期願は他の被告人に関するものであり、本件被告人の公判に関するものではなかった。この状況下で、被告人は当該弁護人の弁論を放棄する意思を示した。
あてはめ
本件では、弁護人は適法な呼出を受けながら出頭しておらず、提出された延期願も本件に関わるものではないため「故なく(正当な理由なく)」欠席したといえる。また、記録上、被告人が自ら弁護人の弁論を放棄した事実が認められる。このような状況においては、弁護人の弁論権を保障する必要性は消滅しており、弁論を経ない結審に手続上の違法は認められない。
結論
弁護人の弁論を聞かずに結審した原審の措置に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
弁護人が出頭しない場合の結審の可否に関する判断枠組み。特に、必要的弁護事件(現行刑訴法289条)等における弁護権の放棄の限界や、訴訟遅延目的の欠席に対する裁判所の対応を検討する際の基礎となる。ただし、本判決は旧刑事訴訟法下のものである点に留意が必要である。
事件番号: 昭和24(れ)1093 / 裁判年月日: 昭和25年9月5日 / 結論: 破棄差戻
原審公判調書によれば、各被告人は最終陳述の後にA辯護人の辯論を抛棄する旨述べているけれども、當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第四六號同年四月六日第三小法廷判決)に示されている通り、辯護人は刑訴法上被告人に屬する權利を行使する外、その獨自の立場において被告人を擁護する固有の權利をも有するものであるから、辯護人を召喚せずそ…
事件番号: 昭和22(れ)331 / 裁判年月日: 昭和23年4月13日 / 結論: 棄却
一 該公判において爲された審理の範圍は上告理由書に書いてある丈けのこと(國籍登録手續をしたかどうか、日本の裁判權に服することに異議はないか、を訊ねたこと)で、犯罪の實體についての審理は何も爲されて居ない。而して第二回の公判においては辯護人立曾の上被告人の人違でないかどうかの點を初めとし、犯罪の實體に付き完全な手續を以て…