記録によれば原審において被告人の妻Aから被告人のため辯護人Bが選任させられていたことは所論の通りであるが、同辯護人の外被告人は辯護士Cを辯護人として選任していたのである。所論昭和二四年五月一八日の公判期日には右両護人に對しいずれも適法にその召喚状が送達されていたにも拘らず、B辯護人は何等理由を明らかにすることなく出頭せず、ひとりC辯護人のみが出廷して審理に立會している事が認められる。かくの如く辯護人が適法に公判期日の召喚状の送達を受けながら該期日に出頭しない場合においては裁判所は特にその不出頭につき正當の事由のあることが明確にされたときは格別必要的辯護制等の関係がない限り、辯護人の立會なきまゝ審判手續を遂行し得べきものであることは勿論であつて、これを目して所論の如く辯護權を不當に制限するものということはできない。この事は辯護人が自ら辯護權を行使しないことに基ずく當然の歸結であつて、被告人がその辯護權抛棄の意思を表明することを待つてはじめて然るべきことでもなく、また公判期日召喚状送達行爲に所論のよな特殊の法律効果を認めるものでもない。
辯護人が適法な召喚を受けながら理由なく公判期日を懈怠した場合と辯護權の不當制限
舊刑訴法410條11,舊刑訴法320條2項
判旨
適法に召喚を受けた弁護人が正当な理由なく公判期日に出頭しない場合、必要的弁護事件等の制約がない限り、裁判所は弁護人の立ち会いなく審判手続を遂行できる。
問題の所在(論点)
弁護人が複数選任されている場合において、一部の弁護人が適法な召喚を受けながら正当な理由なく欠席した際、裁判所がそのまま審理を進行することは、被告人の弁護を受ける権利を不当に制限し、訴訟手続の法令違反に当たるか。
規範
弁護人が適法に公判期日の召喚状の送達を受けながら当該期日に出頭しない場合、裁判所は、その不出頭につき正当の事由があることが明確にされたときは格別、そうでない限り、弁護人の立会いがないまま審判手続を遂行することが可能である。これは弁護人が自ら弁護権を行使しないことに基づく帰結であり、被告人の弁護権放棄の意思表示を要しない。
重要事実
被告人のために2名の弁護人(BおよびC)が選任されていた事案である。公判期日に際し、両弁護人に対して適法に召喚状が送達されていたが、B弁護人は何ら理由を明らかにすることなく出頭せず、C弁護人のみが出廷して審理に立ち会った。第一審はこの状態で審理を進行し、弁護側はこれが弁護権を不当に制限する違法な手続であると主張して上告した。
あてはめ
本件では、欠席したB弁護人に対し適法に召喚状が送達されており、不出頭について正当な事由も明らかにされていない。他方で、もう一人の弁護人であるCが出廷して審理に立ち会っている。このような状況下で審理を続行することは、弁護人が自ら弁護権を行使しなかったことによる当然の結果といえる。したがって、被告人の明示的な放棄や特殊な法律効果を待つまでもなく、手続を遂行することに違法はない。
結論
弁護人の欠席にかかわらず審判手続を遂行した原審の判断に違法はなく、弁護権を不当に制限するものとはいえない。
実務上の射程
複数の弁護人が選任されている場合、一部の弁護人が不出頭であっても、適法な召喚がなされ正当な理由がない限り、審理の進行は妨げられない。ただし、必要的弁護事件(刑訴法289条1項)において弁護人が一人も出頭しない場合には、本判決のいう「必要的弁護制等の関係」に該当し、開廷できない点に留意が必要である。
事件番号: 昭和23(れ)1944 / 裁判年月日: 昭和24年12月21日 / 結論: 棄却
所論の昭和二三年一〇月五日原審第三回公判期日には被告人Aの辯護人B、同Cは出頭したが、同Dは不出頭のまゝ開廷して審理が行われ、辯護人B、同Cは右被告人の爲に辯論した後裁判長は右被告人に對して、D辯護人の辯論を望むや否やを尋ねたところ、右被告人は同辯護人の辯論を抛棄する旨を答えたので、裁判長は更に被告人等に最後に辯解する…