所論の昭和二三年一〇月五日原審第三回公判期日には被告人Aの辯護人B、同Cは出頭したが、同Dは不出頭のまゝ開廷して審理が行われ、辯護人B、同Cは右被告人の爲に辯論した後裁判長は右被告人に對して、D辯護人の辯論を望むや否やを尋ねたところ、右被告人は同辯護人の辯論を抛棄する旨を答えたので、裁判長は更に被告人等に最後に辯解することなきやをたしかめて、辯論終結したことは記録上明らかである。しかし辯護人Dは同年八月五日の第二回公判期の召喚を適法に受け、B、CEの各辯護人と連名にてその期日請書を提出しながら、同期日に出頭しないものであること、並びに同期日において裁判長より次回公判期日を來る一〇月五日と指定告知されていることも記録上明らかである。従つて原審第三回公判期日には、D辯護人は出頭すべき筋合であつて、同辯護人が何等正當の事由を告げることなくして同期日に出頭しなかつたことは、むしろ同辯護人の職責を盡さないものと見るべきである。されば、被告人が同期日の公判廷においてかゝる辯護人の辯論を抛棄した以上、原審には何等辯護權の行使を不法に制限した違法はない。
辯護人の辯論の行使を不法に制限したことにならない事例
旧刑訴法320条,旧刑訴法410条11号
判旨
被告人が特定の弁護人の弁論を放棄する意思を表示した場合、当該弁護人が不出頭のまま審理を進めても弁護権の不法な制限には当たらない。また、共謀の上で現場の見張りを行った者は、直接実行行為に及んでいなくても共謀共同正犯が成立する。
問題の所在(論点)
1. 特定の弁護人が不出頭のまま弁論を終結することが、被告人の弁護権を不当に制限する違憲・違法な手続に当たるか。2. 現場で見張りを行ったのみで直接の奪取行為に関与していない者に、強盗罪の共同正犯が成立するか(共謀共同正犯の成否)。
規範
1. 弁護権の行使に関し、適法な召喚を受けた弁護人が正当な事由なく不出頭であり、かつ被告人自身が当該弁護人の弁論を放棄する旨を明確に答えた場合には、その弁護人の欠席は弁護権の不法な制限とはならない。2. 数人が共謀し、そのうち一部の者が現場で実行行為を分担し、他の一方が見張り等の補助的行為を分担した場合、その全員について共同正犯(刑法60条)が成立する。
重要事実
被告人Aら4名は、拳銃を用いて強盗を行うことを相談した。実際の犯行時、被告人Aは玄関先で見張りを行い、他の被告人3名が屋内に侵入して強盗の実行行為に及んだ。原審の第3回公判期日において、被告人Aの選任した弁護人Dは、事前に召喚を受け期日請書を提出していたにもかかわらず、正当な理由なく出頭しなかった。裁判長が被告人Aに対し、D弁護人の弁論を望むか尋ねたところ、Aはこれを放棄する旨を回答したため、他の弁護人による弁論のみで結審した。
あてはめ
1. 弁護人Dは適法な召喚を受け、期日指定も告知されていたが不出頭であり、これは職責を果たさないものと言える。これに対し、被告人Aが公判廷において自らD弁護人の弁論を放棄する意思を明示している以上、弁護権の行使が不当に妨げられた事実はない。2. 被告人等は拳銃による強盗を事前に相談しており、Aは共同意思の下で見張りという重要な役割を分担している。したがって、直接実行行為を担当せずとも、刑法60条の共同正犯としての責任を負うのが相当である。
結論
1. 被告人が弁論を放棄した以上、弁護権制限の違法はない。2. 現場で見張りを行った被告人Aにも強盗罪の共同正犯が成立する(上告棄却)。
実務上の射程
被告人が自ら防御権を放棄した場合の手続的妥当性を肯定する例として、また共謀共同正犯(特に現場見張り役の正犯性)を認める初期の重要判例として、答案上のあてはめで引用可能である。
事件番号: 昭和22(れ)125 / 裁判年月日: 昭和23年1月15日 / 結論: 棄却
相被告人の豫審訊問調書を被告人の犯罪事實認定の證據として採用しない場合には、右相被告人を公判期日において訊問する機曾を被告人に與えなくても違法ではない。
事件番号: 昭和26(れ)1140 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
所論田沼弁護人は適法な呼出を受けながら故なく原審第二回公判期日に出頭しなかつたことは記録上明らかであつて(同弁護人提出の延期願は、他の被告人に関するものであつて、被告人Aの公判に関するものではない)かかる場合、右公判において被告人が同弁護人の弁論を抛棄した以上、裁判所は同弁護人の弁論を聞かないで結審しても、これを以て所…