一 適法な召喚状の送達を受けながら、辯護人がその期日に公判に出頭しなかつた場合、その公判において、裁判所が次回期日を指定し訴訟關係人に出頭を命じた以上、その出頭命令は、右期日を懈怠した辯護人に對しても、その効力を及ぼすものであつて、右辯護人に對し、さらに召喚の手續を採る必要はないものと解しなければならない。 二 原審が第四回公判期日に特に小林辯護人に對し召喚状の送達をしなかつたことをもつて所論のごとく、辯護人召喚の手續に違法あり、ひいては辯護權を制限した違法があるということはできない、論旨に掲げられた當裁判所の判例は、辯護人に對し適法な召喚手續の採られなかつた場合に關するものであつて、本件の場合に適切でない。
一 公判の期日を懈怠した辯護人に對してさらに召喚手續をなすことの要否 二 公判期日を懈怠した辯護人に對する召喚状送達の要否と辯護權の不法制限
舊刑訴法320條2項,舊刑訴法410條11號
判旨
適法に召喚された弁護人が公判期日に出頭しなかった場合、裁判所がその期日において指定した次回期日の出頭命令の効力は、欠席した弁護人にも及ぶため、改めて召喚状を送達する必要はない。
問題の所在(論点)
適法な召喚を受けた弁護人が公判期日に出頭しなかった場合に、裁判所が公判廷で告知した次回期日の指定および出頭命令の効力が、当該欠席した弁護人にも及ぶか。改めての召喚手続を欠いたまま審理を進めることが弁護権の不当な制限に当たらないかが問題となる。
規範
適法な召喚を受けながら正当な理由なく公判期日を懈怠した弁護人に対し、裁判所が当該期日において次回公判期日を指定し、訴訟関係人に出頭を命じたときは、その出頭命令の効力は当該懈怠した弁護人にも及ぶ。したがって、当該弁護人に対して別途召喚状の送達等の手続を重ねる必要はない。
重要事実
被告人の弁護人である小林弁護士に対し、第3回公判期日の召喚状が適法に送達されたが、同弁護士は出頭しなかった。同期日には別の弁護人である中村弁護士が出頭し、裁判所は審理を進めた上で、公判廷において次回期日(第4回)を指定し出頭を命じた。第4回期日にも小林弁護士は出頭せず、裁判所は特に召喚状を送達しないまま、出席した中村弁護士の立会いの下で公判手続を更新し、被告人が小林弁護士の弁論を放棄する旨を述べた後、弁論を終結した。
事件番号: 昭和26(れ)1140 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
所論田沼弁護人は適法な呼出を受けながら故なく原審第二回公判期日に出頭しなかつたことは記録上明らかであつて(同弁護人提出の延期願は、他の被告人に関するものであつて、被告人Aの公判に関するものではない)かかる場合、右公判において被告人が同弁護人の弁論を抛棄した以上、裁判所は同弁護人の弁論を聞かないで結審しても、これを以て所…
あてはめ
本件では、小林弁護士に対し第3回期日の召喚状が適法に送達されており、同人がこれを懈怠したものである。裁判所がこの第3回期日において適法に次回(第4回)期日を指定し出頭を命じた以上、この命令の効力は小林弁護士にも及んでいる。そのため、裁判所が第4回期日に向けて小林弁護士に再度召喚状を送達しなかったとしても、召喚手続に違法があるとはいえない。また、別の弁護人が出席して弁論を行っており、被告人自らも放棄の意思を示していることから、実質的な弁護権の侵害も認められない。
結論
弁護人に対する再度の召喚状の送達は不要であり、第4回公判期日の手続に違法はない。したがって、弁護権を制限したとする上告理由は理由がない。
実務上の射程
適法に召喚されながら欠席した訴訟関係人に対する「期日の告知」の擬制を認めた判断である。実務上、複数弁護人が選任されているケースにおいて、一部の弁護人が不出頭であっても、公判廷での期日指定があれば改めての召喚なくして次回の審理を進められる根拠として活用できる。ただし、弁護人が一人もいない場合や、必要な弁護が受けられない状況に至る場合は、防御権の観点から別途慎重な検討を要する。
事件番号: 昭和24(れ)1792 / 裁判年月日: 昭和25年1月26日 / 結論: 棄却
記録によれば原審において被告人の妻Aから被告人のため辯護人Bが選任させられていたことは所論の通りであるが、同辯護人の外被告人は辯護士Cを辯護人として選任していたのである。所論昭和二四年五月一八日の公判期日には右両護人に對しいずれも適法にその召喚状が送達されていたにも拘らず、B辯護人は何等理由を明らかにすることなく出頭せ…